ウェリントンマラソン2019 ~後編~ ※前編はこちらから
ウェリントンマラソン選手権・選手権トロフィー
レースの後で…
久々のマラソンを走り終えて、”1位はやっぱり気持ちがいい”ということが率直な感想です。
マラソンでの優勝は2015年のクライストチャーチマラソンに続いて2回目です。日本、オーストラリアでは優勝経験がないのでいずれは優勝できるチャンスがある間にチャレンジしたいと思いました。
ウエストパックスタジアム最上部での表彰式。優勝はいつも嬉しい。
今回は優勝するとウェリントン市民として”ウェリントンと堺市の親善大使として泉州国際マラソン招待”のチャンスがありました。また、レース前後は日本からの招待選手を案内する身ですが、マラソン参加は地元だからという理由だけで2週間前に参加を決めました。
横からレースを乱しに行くのは良くない、優勝を譲ったほうがいい、、、という声も聞こえそうです。しかしレース中、特に終盤は必死で本気です。他の何かを考えているゆとりはありません。今まで”終始楽だった”と思えるマラソンは一つもありません。必ずきついです。
トップでゴールする選手でも、
笑顔で余裕があるように見える選手
明らかに苦しさを表現している選手
様々ですが、必ずきつくなっているということが事実です。
ランナーにとってのモチベーションは人それぞれ違います。
”なぜ走るのか”
という答えも人それぞれ違ったものです。
私にとって”走る”ことは、
ランニング中の限界に近付いているけれどギリギリ体をコントロールできている感覚が楽しい
ということのような気が最近していました。
コントロールできないとつまらないです。
限界付近でコントロールできると練習でもレースより楽しい時も多々あります。
マラソンはミスを犯すと限界を超えてコントロールできない範囲で30分も40分も走らなければならないので大変です。また練習では距離とマラソンペースで限界付近まで迫っていくと時間がかかるので負荷が大きく何回も繰り返せないので楽しむことが短い期間で規則的に楽しむことが難しくなってきます。
こういったことから、私の体はマラソンに向いていても、私の”走る目的”は少しマラソン向きではないような気がします。
以前コーチに、”どうやって適正種目を決めるのか?”
という質問をしたときに、
『”走る目的(なぜ競技・競争するのか)”、”その選手が好きな種目”、”挑戦したい種目”
をディスカッションして選手の意向に任せる種目が優先されるべき適正種目。』
と言われたことがありました。
(コーチに”なぜ走るのか?競技をするのか?”と聞かれた時、私はすぐに答えられませんでした…)
今回のマラソンは、”日曜日のロングラン”のはずが”本気のロングラン”で、私の”走る意味”を見つめなおすきっかけにもなりました。
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考察・分析 ”マラソンという競技”
① ゆっくり入って後半上げる
これは正確に言うと、だいたい同じペースで最後まで走り切るということだと思います。2時間以上走るマラソンでは“少し速いかな”と体が感じているペースではおそらく最後まで走り切れません。気持ちいい速さだがゆとりが十分にあるといったペースで進めると良いレースができると思います。
これはマラソンに限らず長距離の種目に対して言えることであり、前半と後半をだいたい同じペースにそろえて走ることが自己ベストを出すポイントであると思います。
② 時計は見ない
時計を見ると疲れます。というよりも、時計のペースと体に感じる努力感が同じという状態が必ず毎日同じとはいきません。同じペースでも速く感じる日もあれば遅く感じる日もあります。これを無視して狙ったペースだけを追って、いつも時計を確認しているとオーバーペースになることが多くなります。特にマラソンの種目の性質上、“レースペースが遅く感じる“ということになります。記録を狙いに行くレースペースで走っているのに遅く感じてじらされるようなペースで推移していく種目はハーフマラソン以下の距離の種目ではありません。大切なのは42㎞という距離を見据えて、“今日の感覚“を最初の3~5㎞くらいでつかむことだと思います。遅く感じれば5㎞以降にペースアップしていっても全く手遅れではないと思います。42㎞を丁度体力を分配して走れるペースを発見できることが、崩れないマラソンをするポイントだと思います。
③ 精神的な疲労
2時間以上同じように走っているので、ランニング中に多くのことを考えます。多くのことを考えるとエネルギーを消費します。また先頭を独走していたり、タイムを気にしたり、天候や給水を気にしたり…様々なことが気になります。気になることが精神的な疲労だけでなく、レース中の位置取りやフォームの乱れに繋がって体力的な疲労を生むこともあります。マラソンを走っている時は、“今日ちょうど42㎞を走り切れる努力感“を発見したら、常にそれを維持するように体力を使うようにして、必要以上のことを考えたり動いたりしないことが精神的な疲労を生まないポイントになってきます。
④ エネルギー
体が大きい人はエネルギーを使います。体が小さい人はエネルギー消費が少ないです。単純に言えば体重の差で消費カロリーにも大きな差が出てきます。そのため、42㎞を走り切れる努力感を発見し、うまく動きをコントロールできるようになったら必要な分のエネルギー(水分であったり、エナジージェルであったり)を必要な分だけとるようにします。これはどの程度必要なのかは人それぞれ個人差が大きいので、ある程度練習の中で探していく必要があります。ドリンクテーブルが来るたびに必ずドリンクやジェルを取る選手も中にはいますが、必要ない場合も多いです。必要ないのに無理に取って体力的な疲労、取れなかった時の精神的な疲労、接触による転倒といったリスク減らすこともマラソンのテクニックの一つといえます。
練習中にややエネルギーがなくなってきたときに、同じペースで走り続けてどれくらいで体が動かなくなってくるのかを調べて、手遅れにならない時期というのを探っておくと必要なドリンクステーションやジェルを置いておく場所などを設定できると思います。
まとめ
こうして考察していくと、マラソンは他の長距離種目とは違った楽しみ方を練習やレースから発見できるように思います。
800m~ハーフマラソンまでの中長距離種目では、“走力”というポイントのみにフォーカスしてトレーニングプログラムを進行させていけばある程度狙ったタイムが出ると思います。
しかしマラソンは“35㎞の壁にあたった”と言って大きくタイムを落とす選手や、逆に最後にペースが上がる選手などその結果の幅がかなり大きく出ます。
練習のプロセスもそうですが、レース中の心理・戦略・補給などはマラソンという種目と自分の走りを研鑽していくことで、自分の体と精神状態に適した方法が導き出されてくるのかと思います。
また非常に重要なことは“肉体的・精神的な疲労を極力避ける”ことですが、それはすなわち42㎞の中でどちらも必ず大きく疲労するということです。そしてその疲労を呼ぶ因子は大小合わせ様々なところからやってきます。様々な状態における適応力を磨いておくこともマラソンのレースでのカギになります。マラソンは限界を超えてしまうとレース中の回復は困難です。“限界を超えても走れ!“というアドバイスもあるかもしれませんが、マラソンは限界を超えてしまう一歩手前のちょうどいいところでの”限界を超えないための危機回避能力“を磨いていくことが重要になってくるのではないかと思います。
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