川汲で出会った

休憩中の漁師さんと奥さん、大工さん。

「俺は、4歳から船に乗ったよ。

おやじの船とは別の、じいちゃんの船。

じいちゃんと孫船さ。

全然、嫌じゃなかった」

 

「養殖の昆布は手間がかかる。

ロープに苗植え付けて、余分の

苗は間引きして、

よく農業と同じっていうけどさ、

手間は同じ。

でも、農業とちがうのは、

海は危険が伴う。

命がけだ。

農業は命かけなくてもできる。

そこがちがう」

 

「20年前に、頭に癌ができて、

片目があまり見えないんだ。

あんたの話しもよく聞こえない。

頭がぼんやりしてるよ(笑)

でも、ちゃんと感じるし、

怒りの気持ちは持ち続けてる。

怒り?

たとえばさ、

5年前から吸収されて、

ここは函館市になった。

 

ここが函館市ってなんなんだ。

ここはずっと南茅部だ。

なんで土地の名前、残せないんだ。

南部茅部は、山があって川があって

自然が豊かだし、

日本一の昆布の産地だ。

昆布だけじゃない

マグロ、うに、帆立、イカ、

うまい魚の収穫量も高い。

誇れるものがたくさんある。

南茅部に生まれたこと、

育ったことに誇りを持って生きてきた。

つまらない税金対策なんかの都合で

子や孫に、

「南茅部に生まれてよかった。

郷土に誇りを持て!」

って言えなくなっちゃったんだ。

南茅部のためにがんばれ!って

言えないんだよ。

函館市のためにがんばれ?

ちがうだろ?

函館市がこの小さな南茅部のこと

真剣に考えるわけがない。

町の吸収、合併って、住んでる者の

誇りを奪うんだ。

悲しいよ」。