2012年、国際的な政権選択選挙の年(1) from 911/USAレポート/冷泉彰彦 | dashdashbackのブログ

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今年も残すところ僅かとなりました。年が明けると2012年で11月にはアメリカの大統領選挙が控えています。それだけではありません。この2012年という年は、世界各国での政権選択選挙が集中する年なのです。アメリカ以外にも、台湾総統選(1月)、ロシア大統領選(3月)、フランス大統領選、韓国大統領選(12月)などが予定されています。中国の共産党大会ではポスト胡錦濤が選出されることになると思います。

 では、来年は「天下大乱の年」となるのでしょうか? 確かにそれぞれの選挙の抱えている意味合いは重たいものがあるわけです。例えば年明け早々に行われる台湾の場合は、「中国への距離感」が争点になっています。再選を目指す与党国民党の馬英九氏は現状維持だとすれば、民進党の蔡英文氏は「距離を接近させすぎるな」という主張をしているわけです。

 ロシアの場合は、メドベージェフからプーチンへの「大政奉還?」がどの程度の支持を受けるか注目されますし、フランスの場合は、EUとユーロを維持するためのここ数年間のサルコジ政権の施策に対して信任が問われることになります。韓国の場合は、李明博のハンナラ党によるグローバリズム推進への賛否は相当に大きく分かれることになるでしょう。

 このように、各国の「抱えているテーマ」を見てゆくと、それこそ大きな問題ばかりであり、そうした問題が争点になって選挙が行われること自体が「大変な年」という印象を与えます。これに加えて、現在の世界経済は多くの問題を抱えています。アメリカは、リーマン・ショック以来の景気低迷からの脱出に時間がかかっていますし、ヨーロッパは危機の真っ最中、中国の成長には減速が見られ、ロシアの期待する原油価格は高値安定どころか乱高下を繰り返しているわけです。

 では、各国の選挙を通じてどんな民意が出てくるのか、とりわけアメリカやフランスの場合に、「極端な内向き志向」や「世界の混乱に対する負担の拒否」といったネガティブな傾向が出てくるのかという問題は、確かに注視すべきポイントでしょう。

 ですが、現代の民主主義というのはそんなに単純に民意が国策をひっくり返すことはできないのです。というのは、実際に政権を担当してみれば「実現可能性」のある政策にはそれほどの幅はないわけで、いくら民意だからと何でも「大変革」をするわけには行かないからです。

 2009年に日本の民主党が衆院選に勝利し、「マニフェスト」を掲げて鳩山政権が発足しましたが、実現可能性の低いものも多かったわけで、それから2年半を経過した現在、実現に至っている政策の数は限られています。この点については、提案した民主党や、それを支持した有権者を含めた日本の政治に問題があるように思われがちですが、ある意味では世界的な「実現可能性の狭さ」という現象の一つとも言えます。

 つまり、選挙で勝つためには「分かりやすい」政策を掲げる必要があるが、実際に政権を担当するとなると、何もかもがそうは単純ではないわけで、決して公約通りの政権運営はできない、これが現代の世界各国、特に成熟した各国に共通の政治的な傾向と言えます。

 こう申し上げると、まるで現代の民主主義というのは「詐欺」ではないか、そんな印象を持つ方もあるかもしれません。確かにそうした側面はあります。ですが、以前にもこの欄でお話したように、現代の職業政治家というのは、ある意味では「民意」と「実現可能性」の乖離を「埋める」のが役割であるわけで、仕方がない面もあるわけです。

 勿論、極めて重要な問題に関して、本当に「民意」で政治が動いてしまうこともあります。いくら、実現可能性が低い政策であっても、本当にストレートな形で選挙の公約に立ててしまった場合には、選挙結果を無視することはできないからです。

 ということは、現代における政権決定の選挙というのは、三つの観点に分けて見てゆく必要がありそうです。一つは表面的な「短期的な政策」という面です。景気が悪ければ財政出動して欲しい、福祉や年金のカットには可能な限り反対、自由貿易の副作用に敏感、こうした声は世論の一部としてどの国にもあるわけです。それが前の政権によって著しく否定されると、政権交代を起こす大きなパワーになるわけですが、だからと言ってこうした政策の全てが実現可能なわけでもないのです。

 二つ目は、もっと深い世論の「決意」です。例えば長期政権を倒すとか、関与していた戦争から撤兵するといった具体的に非常に深いレベルで世論が「決意」を選挙を通じて表明した場合は、これは実務的に当面可能かどうかといった話ではなく、政権としてはこれを受け止めざるを得ないでしょう。

 三点目は、次期リーダーの資質の問題です。実現可能性の限られる中で、民意をどう実際の政策に反映するか、これは単に予算や人員の割り振りが上手なだけではダメです。あるときは、民意に背いてでも「出来ないことはできない」というケースを「さばく」能力が必要となります。その場合は、現実との折り合いをつけつつ、その政策変更を民意に対して説明する能力が問われるのです。