思い出してしまった。

あれは、阪神大震災の年の秋頃の事。

自覚はありませんが、

私はどうやら
『保存物』の製作が好きな様で、

必死になって
作った時期がありました。


そんなに飲めない梅酒。

沢山は飲まないシソジュース。

少しだけ食べる梅の丸薬モドキ…。


ついには
保存物の王様、
梅干しにも触手が動き、
手を出しました。

レシピの通りに
順調に梅干し作りは進んでいました。

しかし、
瓶に梅とシソを入れたところで

ピタリと止まってしまったのです。

『…それらの上に重石を載せて…』

ん??
重石?

そんなのうちには無いよ。

でも、
この為だけに重石を買いたくない!

こんな時こそ、頭を使うんだ!!
頑張れ!
私の脳みそ達!!


見ぃ~つけた♪

アイデア閃いた私の目に、
様々な硬貨がぎっしり入った、
スーパーの袋が
キラキラ輝いて見えました。


硬貨集めててよかった。
こんな事にも役立つなんて!


我がアイデアにすっかりご機嫌な私は、

梅干しの重石として
慎重に鎮座させました。

勿論
念のため、袋を何重にもして。


すっかり
梅干しの記憶が
忘却のかなたへいってしまった、
数ヶ月後。

うっかり落としたキッチン鋏が、

運悪く、梅干し壷の蓋を直撃。

これを機会に、
日陰の存在だった梅干しが、
漸く表舞台に出てこられたのです。

破片が
大切な梅干しに
混ざっては大変、

と中を覗きました。

幸い破片は
重石がわりの
硬貨の袋に遮られ、
梅干しと接触する事なし。

よかった♪
アイデアの勝利だね。
等と、いい気分になりました。

しかし、
破片を撤去していくうちに、
何やら不吉な予感…。
梅干しが出来ると
一緒に出来る『梅酢』が、

じんわりと、

嫌ぁな感じで、
スーパーの袋の上にまで
上がり込んでいるではありませんか!

さらには、
硬貨を入れていた袋に、何やら穴が…。

しかし、
袋は念のため
何重にもしておいたから、大丈夫なハズ…。

焦りながらも慎重に、
『重石がわり』の硬貨入り袋を
そっと持ち上げると、
幾重にも防御していた袋を、

梅酢は難なく突破しており、

あろう事か、
梅のみならず硬貨まで
しっかり浸しておりました。

あぁ…
折角の梅干しが…

なんて
がっくりきている場合では
なかったのです。

何故なら、
梅酢にしっかり漬け込まれた硬貨達は、
化学反応を起こし

ある硬貨はピカピカに、

またある硬貨はさらさらに…

『さらさら』にぃ????

そう、
アルミで出来た1円玉が、
強い酸性の梅酢に溶かされて
『さらさら』
になってしまったのです。

お金が溶けるなんて
予想外の展開。
…まずい。
ど、どうしよう。

この現状の打開策は…

日本銀行に行って、
換金してもらおう!

…という訳で、
溶けかけの硬貨を持って、
日本銀行に行きました。

換金の理由を話すとき、

『梅干しの重石がわりに
硬貨使いました』

とは口が裂けてもいえず、

『地震で
梅干し壷に硬貨の袋が
落ちたみたいでぇ…
モゴモゴモゴ…。』

結局、
溶けきってしまった硬貨以外は、無事換金完了。


大体、お金を重石代わりにするなんて、
罰当たりな事を考えたから、
この様な結末になったんだ!

私のおバカ!
罰当たり野郎!

日本銀行を後にしながら、
こんな罰当たりな事は、二度と致しません!
と深く反省したのでした。