白くて四角い面長の顔をした大男の首には太い電極が埋め込まれている。有名なホラー映画に登場する人造人間である。この怪物が、フランケンシュタインという名だと誤解されることもあるようだが、この怪物には名前はない。路傍のどんな些細な雑草や小石にさえ名前があるというのに、この、生き物には名前がない。フランケンシュタインというのは、この怪物を作った医師の名前であり、この物語の作者は、メアリー・シェリーという19世紀のイギリスの女性である。この原作の後、あらゆるところでリメイクされ、原作とはかなりかけ離れた作品もあり、ほとんどの人は原作など知らずに、楽しんできたことだろう。かくいう私とて原作は読んだことがない。
フランケンシュタイン医師は、墓場から新鮮な遺体をいくつも掘り起こして、肉体を切り取り、張り合わせてこの怪物を作り上げて行く。電気ショックで意識まで作動させるが、出来立ての意識には、言葉も知識もない。腕力を振るえても、感情のコントロールもうなくできない。出来上がった怪物の余りのおぞましさに、製作者のフランケンシュタインは怪物を見捨ててしまう。その後の、物語の展開は、ここではあまり関心がないのだが、この継ぎはぎだらけの人造人間が、知識を蓄える過程が、今日注目されている人工知能AIを彷彿とさせるのである。与えられた知識を蓄え、網羅的に検索し、要望に沿った解を見出すプロセスこそが、この継ぎはぎの怪物が、人として生きるための知識や感情のコントロールが学習するプロセスにそっくりだから、AIの話題を聞くたびに、この怪物の辿った悲劇が浮かんでくる。AIを作り出し、AIに学習させ、旨くコントロールして、使いこなそうという意図が、図らずもこの怪物のような末路を辿る不安を、どこかに宿している。AI利用の規範作りの計画もあるが、フランケンシュタインのようなマッドサイエンティストがいつ何時出現するとも限らない。
人体の血中にナノプラスチックが見つかったというニュースもあり、プラスチックの溶剤が環境ホルモンとなり、生殖機能に影響が出るではないかと言われ始めた。それに限らず、環境ホルモンとみなされる化学物質は多々あり、現在の少子化は、まだ経済環境としてしか問題視されていないが、環境ホルモンが少子化にも関わっていると解明されたときは、時すでに遅しとなっているだろう。AIも今後の人類存亡にどのようにかかわって来るかわからないが、フランケンシュタインが、人類の存亡を考える契機になるかもしれないと思ったことをここに認めておきたい。