原子力発電で発生する核のゴミが、溜まりに溜まって、現在2万トンあると云われている。

フィンランドという安定した地質のところで、地下数百メートルに埋設して、放射能が自然に低下するまで待とうという地層処分が行われているから、日本でも同様に地層処分をしようという流れになっている。しかし、埋設する地点を探すのに手こずっていて、過疎地の限界自治体に、札束をチラつかせて応募するよう働きかけているのが現状である。現在北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が名乗りを上げ、文献調査が行われている。長崎県の対馬市も話題にはなったが、市長の判断で拒否となった。賢明な判断だと思う。

 文献調査で、はたして推進可能と結論できるか、今回の能登半島沖地震が疑問を呈していると思う。能登半島地震の震源域では、2020年12月から群発地震活動が続いていた。その活動の原因は、地下から上昇している“流体”だと考えられている。ただ、その流体の本体は確認されていないので、あくまでも想定である。

 マグマは、太平洋側から沈み込んだプレート(スラブ)に含まれている海水が、地下100㎞付近で絞り出され、その周辺にあるマントルの融点を下げて作り出されている。そのマグマが上昇し、火山の地下でプールされている。そのマグマ溜まりから、さらなる上昇の条件を待って、火山の溶岩が吐き出されている。火山の分布は、火山フロントと呼ばれる線状の配列をしていて、北海道から中部地方の地形の高まりを作っており、さらに小笠原諸島に連なっている。その線状配列は、スラブの深さが100㎞となるところの、地上にほぼ位置している。流体の一種であるマグマはそのように補給されているが、日本海側の九州や山陰の火山のことがよくわかっていない。スラブの深さが100㎞とは関係ない。能登半島の流体がどこからきているのかもわからない。和歌山県のある紀伊半島では、火山はないのに温泉がたくさんある。それは、フィリピン海プレートの沈み込みにともない、スラブから吐き出されて上昇した水が、温泉の元となっている。そこの、吐き出された水は、マグマを作り出さずにそのまま上昇し、温泉の元となっている。もちろん、能登半島にも温泉があり、紀伊半島と同じようなことが考えられるが、紀伊半島のように調査はまだなされていない。

 核のゴミ問題を扱っている、原子力発電環境整備機構(NUMO)では、地下水の挙動をシミュレーションで調査しているというが、地下のどこに、どのような亀裂が入っているのかなど、まったくの未知数であり、そのような場のシミュレーション結果は、全く信頼性がない。それに、まだわかっていないことは、文献さえなく、いくら文献を当たっても何も出て来ない。能登半島の群発地震に関連した流体のことは、今回初めて分かったことであり、同様に悪さをする流体が、他のどのような地域にあるのかは全くわからない。文献調査で分かることなど限られているのだ。さらに、保存する時間の長さも問題だ。数万年から10万年後のことに、現在の人々が責任を持てるのか。そのときまで人類が存続しているという保証もない。核のゴミの地層処分など、無責任な絵空事だ。核のゴミを出し続けている原発は、即刻中止すべきだ。