長崎港からクルーズ船で2時間半の船旅に出かけました。目的地は端島。通称軍艦島です。日本の高度経済成長時代を支えた島です。
島に上陸するには宣誓書に署名しなければなりません。島にトイレはありません。ガイドの人はいかめしい叔父さんかと思えば、紳士でした。地価600mまでエレベーターで降りて、気温30℃湿度55%の行動で8時間、ひたすら石炭を採掘します。
地上にあがってくる頃には石炭の粉で体は真っ黒。海水を浴びて石炭を落として、真水の浴槽に入る。壮絶な労働環境です。それでも待遇は抜群で当時、カラーテレビや洗濯機など庶民には手の届かなかった電気製品も各家庭にあったそうです。
正面は小学校と中学校で千人規模のマンモス校です。四階までが小学校で、五階からは中学校でした。運動会も開かれました。どの階にも巨大なガラス窓がはめられていて豪華な校舎でした。当時としてこのような高層ビルはここだけでした。
映画館や居酒屋もあり島を出なくても娯楽は整っていました。各部屋から見える眺望は最高の物だったでしょう。逆に言えば、それだけ環境が良くなければ過酷な労働の見返りにはならなかった、人を集めることもできなかったのでしょう。
ここで採掘される石炭はコークスに加工され、八幡製鉄時に送られました。鉄鉱石はコークスで還元炎で鉄に精製されます。まさしく日本の高度経済成長時代を支えた所です。
廃墟マニアでもなくても人々をここに惹きつけるのは何なのでしょうか。廃れた中に美しさがあります。かってここで生活していた方々の息づかいが今も伝わってきそうな所です。映画やアニメの舞台になりました。かって五千人が暮らしていた端島。人を惹きつける魅力は衰えることがありません。