花供懺法会 結界の向こうに見える祈りの世界 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 護摩壇には結界が張られています。結界の向こうにはどんな世界が広がっているのでしょうか? そして、どんな祈りの世界があるのか? 山伏達は弓矢で邪気を払い清浄な空間を作ります。そして、仏を迎える準備をします。

 

 護摩壇に火がつけられ採灯護摩が始まりました。今年は乾燥が進んでいるのが、爆発的に燃え上がります。 

 

 炎の勢いがあまりにも激しいので、前の山伏が自分の前から動かれると直接体に火照りが襲ってきて体が熱くなります。結界の向こうは灼熱の世界です。山伏達の険しい表情、装束はまたたくまに汗でびしょ濡れになり、ひたすら真言を唱えます。

 

 太鼓の響きは体を通過していき、般若心経の声は、五臓六腑どころか、魂にまで染み込んでいきます。独特のリズムが人々を祈りの世界に誘います。それは、無心の世界です。言葉は聞こえてくるのですが、空の世界に引き上げられていきます。

 

 日臓上人が笙の窟で冥界に赴き、龍樹菩薩に出会うのですが、龍樹は仏教に空の世界を打ち立てた人。結界の向こうは空の世界が広がっていました。

 

 採灯護摩は最高潮を迎え、護摩木が焼べられ始めました。山伏達は、人々の祈りや願いが書かれた護摩木を護摩壇に投げ入れます。願いは激しい炎で熱気とともに空に舞い上がりました。山伏達はそれぞれの役を渾然一体になり、厳かに祈りは進められます。

 

 花供懺法会が滞りなく終わりました。鬼が投げ餅をするとは! 修験道の開祖役行者は鬼を調服して、修験の修行をする人たちのお世話をするよう命じました。鬼の子孫が前鬼という村に今でも住んでおられます。五鬼助さんとお話ししたことがあります。役行者は歴史上の人物かも知れませんが、五鬼助さんはれっきとした鬼の子孫で今もお元気です。その歴史は脈々と引き繋がれています。役行者は鬼に水を汲ませ、たきぎを採らせ、言うことを聞かないと呪縛したといいます。言うことを聞かない鬼も鬼ですが、体が呪縛されたらどんなでしょうか。前鬼の五鬼は5つの家がありましたが、今では一軒しかありません。五鬼助さんは嬉しそうに息子が継いでくれることになりましたと話してくださいました。当分は、大峰奥駈道ではお世話になれそうです。

 

 日本最大の秘仏、蔵王堂の金剛蔵王大権現様です。今5月6日まで特別御開帳になっています。中央が過去を救済する釈迦如来、右が現在を救済する観音菩薩、左が未来を救済する弥勒菩薩です。室町時代の制作ですが、秘仏なので色も鮮やかに残っています。憤怒の形相は、すべての民衆を救おうとする仏の強い意志を表しています。乱れた世の中では、穏やかな表情ではすべての人々を救うのはできないのでしょう。

 

 ちなみにイエズス会のフロイスは「日本史」で、吉野の山奥には鬼が住んでいて、悪魔の交わりの儀式をしている。とローマに報告しています。これを見たらキリシタンからは、まさしく悪魔。なぜ憤怒の形相をしているのか。その意味を深く観念したら彼らの布教は成功したのかも知れませんけど。