バレンタインディーに寄せて 火曜日 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 2008年に平原綾香さんがリリースしたノクターンという作品があります。平原さんというとクラッシックの曲に歌詞をつけて歌うことで知られています。このノクターンもショパンの夜想曲第2番変ホ長調で、日本でもピアノ演奏がされています。彼女は英語で歌っていますが、この歌詞は秀逸です。 

Love, true love is to ask nothing in return
You are my destined soul mate
Your love, adoring eyes
We can see the light because we know the darkness
Everything has meaning, even campanula in the wind

Each one of us has pain and sorrow
Sheds a secret tear
But drops of your tears will fall to earth and
Welcome new life into the world again and again with love

Love, true love is to ask nothing in return
Fated love that is meant to last
My love, your gentle gaze
A drop of your soul within me that I adore
Everything has an end, but we'll be reunited


 愛、真実の愛は決して見返りを求めません
 あなたは運命で繋がれた魂の友
 あなたの愛、愛情に満ちた眼差し
 私たちは闇を知っているからこそ光を見ることができます
 風にそよぐカンパニュラでさえ、すべての物に意味があります

 人は誰もが痛みと悲しみを抱き、
 人知れず涙を流します
 でも、あなたの涙のしずくは、大地に落ちて
  愛とともに新しい命を世界に幾度となく迎えます


 愛、真実の愛は見返りを求めません
 運命づけられた愛はずっと続きます
 私の愛、あなたの優しい眼差し
 私の内にあるあなたの魂のかけらを私は深く愛します
 すべてに終わりがあろうとも、私たちは再び巡り会えるのです
 


 歌詞のようにカンパニュラに風か吹きます。風に揺れる小さなカンパニュラにも意味がある。歌詞から分かるのは、二人は何らかの理由で離ればなれになっているということです。何が二人を引き裂いたのかは書いてありません。彼はそう遠くない未来に別れなければならないことを知っていました。たとえ死の淵を歩いていても彼女は一隅の光だったのでしょう。しかし、それを伝えることが彼女を苦しませることになる。だから流れる涙を秘めていました。彼の涙は大地にふりそぞき、愛とともに新しい命を芽吹きます。一粒の種が大地に落ちれば、多くの実を実らすようなものなのでしょう。一粒どころかどれだけの涙を流したことでしょう。 

 彼の優しい眼差し、それを見ても何も気づけなかった自分。彼とともに時間を共有できたことがいかに素晴らしい時間であったのか。鈍感な自分とともにその時をともに喜びで満たしてくれた彼への感謝。その一瞬一時を心に刻むのは痛みを伴います。失われ引き裂かれた魂のかけらは、私の心の中に住み着き、私はそれを深く愛しています。この世界は幕屋のような物ですべての物は移りゆきます。この体さえも仮の住まいのような物なのでしょう。いつかその仮の住まいを越えて、二人は再び巡り逢い、結ばれる。この希望を抱いて今夜も彼に想いを巡らすのでしょう。ノクターン、夜想曲というものはそんな旋律なのでしょう。 

 日本語に訳してしまうと自分の世界観の浅薄さと向き合わなければなりません。英文の歌詞は広い深い宇宙のような世界を表現しています。ひょっとしたらそれは日本語という言語の限界なのかも知れません。どうしたらこれを伝えられのか、もうそれは諦めて原文のまま浸るのが一番のようです。バレンタインウイークの今日は火曜日でした。