昨夜からの雨は上がって、香肌の山々には朝霧がかかっている。櫛田川に架かる沈下橋は静か。音も無く流れている。春の兆しを求めて来たけどそんな気配はない。
寒々とした景色。風がないのでなんとか寒さはしのげる。川底は去年の増水で透明。紅葉した葉っぱがちらほら見える。朝霧は西の渓谷からやって来る。それが細長くたなびけば、真っ白な龍の形になることがある。
河原の岩にへばりつくツツジやネコヤナギ。栄養不足で大きくなれない。岩にしっかり根を下ろしてどんな濁流にも流されない。
そんな岩肌にネコヤナギが咲いている。雨粒をいっぱい結んで朝日に輝いている。暖かくなれば緑の葉っぱを伸ばすだろう。銀色の毛が寒さと水から種を守っている。
野バラについた雨粒。それが凸レンズとなり、向こう岸の稜線を映し出した。こんな小さなレンズの中に広い景色が逆さに映る。とげを持った小枝はますます伸びて春には小さな花を咲かせる。野バラはやはり薔薇なのだ。その時節までもう少し。冬に蓄えたパワーが春に爆発する。