夕日が影る五箇篠山城 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 夕日が小高い丘を照らしています。西日はますます稜線に近づき夕日は弱々しくなっていくのが分かります。

 

 真っ赤に照らされたメタセコイアの紅葉。ますます赤く染まります。強い西風は灰色の雲を東の空に吹き散らし、空模様が忙しくなってきました。

 

 小高い丘の山頂からは櫛田川の河岸段丘にちりばめられた家々が見えます。中世、ここは五箇氏の居城でした。丘は笹に覆われ難攻不落の山城です。ここを織田氏の軍勢が攻めました。深い笹は足軽を寄せ付けません。軍勢は笹が枯れるのを待ちました。そして、火を放ちます。枯れた笹に覆われた篠山城はあっという間に焼け落ちました。

 

 それ以来笹は生えなくなりました。今は枯れススキが山頂を覆います。敵軍に辱めを受けるなら、井戸に身を投げて名誉を守る。五箇氏のお姫様は井戸に入水します。

 

 もう西日は稜線に入り、山の端だけが残照で覆われました。山頂の桜の木のシルエットが悲しげです。西風に吹かれて裸になった小枝を木枯らしが吹き抜けています。今はじっと寒さに耐えて、春に桜色になろうと全身を震わせています。風が吹く音以外は聞こえない中で、桜の幹の中では桜色をした樹液が樹全体を駆け巡っていることでしょう。春のなれば、多くの人が五箇篠山城を訪れます。今は、冬。すべては静謐の中で春を待っています。