昨日からの豪雨で櫛田川は増水している。沈み橋は完全に水没。どこにあるかも見えない。
川に白い波形って濁流が轟音を放っている。静かな清流とは大違い。
苔むした岩が濁流に逆らって、それでも濁流は岩に襲いかかる。苔の緑の中に赤い物が見える。ツツジが咲いている。岩には苔が生えて、やがて土を呼び込み、そこにツツジが根を張った。何年かかってこんなになったのだろう。よく見れば岩には目もあるし、鼻もあるし、口を開けて川の流れを飲み込んでいるように見える。
泥濁り、笹濁り、薄濁り。泥濁りとは今朝のような土砂の色をした濁流を指す。薄濁りとは透明になる直前のちょっとした濁り方。笹濁りとは笹の葉の緑とよく似た濁り方。櫛田川流域に住む人たちがいつのまにかつけた呼び名だ。
台高山脈に降った雨は、分水嶺を隔てて真東に伊勢湾に注ぐ。それが櫛田川。西に降った雨は紀ノ川を通して大阪湾に注ぐ。櫛田川が氾濫すれば、紀ノ川も氾濫する。今回は紀ノ川の被害がニュースで報道された。東西の両川が紀伊半島をまっすぐ横断しているのは、中央構造線。関東から九州東部1000kmにも及ぶ日本最大の大断層だ。そして、注目すべきは北は花崗岩で南は緑色片岩という構造断層。同時に西日本では毎年5mm程度ずれ動く活断層だと言うこと。年間5mmといっても1000年経てば5m。7400万年前に始まった地殻運動が今も進行している。その様子は衛星写真を見れば鹿島灘から佐多岬半島まで東西を貫く一筋の線が見える。櫛田川も紀ノ川も吉野川も中央構造線に沿って流れている。とりわけ櫛田川は川の中を中央構造線が貫いている。
中央構造線をたどれば、そこには必ずパワースポットが点在する。東は鹿島神宮から始まり、豊川稲荷、伊勢神宮、葛城山、大峯山、高野山、住吉大社、石鎚山など小さな社も含めれば数え切れない。
雨が上がって東の空に青空が見えた。でも西の空は雲が濃くて真っ黒け。棚田は昨日からの雨でますます綺麗に見える。
沢ガニが農道にいた。雨なんかへっちゃら。もっと降れとでも言ってるかのように、口から泡を吹かせている。近づいたらハサミを振り上げて戦闘態勢に入った。踏んづけてやろうと思ったけど、やめた。見上げたら真緑が雨でもっと深緑になったから。