伊勢神宮は1300年前からSDGsを実現してきた! | バイカルアザラシのnicoチャンネル

バイカルアザラシのnicoチャンネル

 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 今から50年ほど前、ロンドンキングスカレッジのアーノルド・トインビー教授が伊勢神宮を訪れたことがあった。彼は世界史を地政学的に研究し、それを「歴史の研究」として出版した世界的な歴史学者だった。彼は、伊勢の大學を訪問したとき、「伊勢神宮はデルファイの神殿のようです」と話した。デルファイの神殿は太陽神アポロが祭られているし、アテネが圧倒的に軍事的に不利な状況でペルシアと戦ったとき、デルファイの神託で奇跡の勝利をした。伊勢神宮の内宮は太陽神の天照大神が祭られているから、トインビーにとっては最大の賛辞を送ったのだろう。

 

 そのときそれを聞いた大学の先生は答えた。「デルファイの神殿は素晴らしい。しかし、それは今は遺跡になっているでしょう。今、そこで祭が行われているのでしょうか。信仰が受け継がれているのでしょうか。今も祈りがそこで行われているのでしょうか、伊勢神宮は神代の時代から信仰が受け継がれ、今も祈りが行われ、人々が今もお詣りに来ているのです。神殿は20年ごとに建て替えられ、とこしえによみがえります。」トインビーは教授の返答に口をつぐんだと言う。

 

 確かに写真を見ると向こうには神殿があり、手前には平地になっている。20年ごとに社は建て替えられ、新しくよみがえる。平成25年には62回目の遷御の儀が行われた。次回の式年遷宮は令和15年10月に行われる。伊勢神宮はいつまでも若い。これを常若(とこわか)と呼んでいる。

 

 内宮にも荒祭宮があるように、外宮にも多賀宮(たかのみや)がある。豊受大神の荒ぶる魂を祭る。豊受大神は天照大神に毎日食事を用意する神様。なので、全国から調理人やコックさんが参拝する。それが広まって今では芸能関係や農工商など産業に携わること達の参拝が絶えない。

 

 正宮ではやはり国家安泰や五穀豊穣など大きな祈りを捧げ、その後、この多賀宮にやってくる。一時間もしていると、テレビなどで引っ張りだこの人がやって来た。やはり噂通りなのか、それとも偶然なのか。弟子なのかお付きの人なのか、いっぱい引き連れて。何ともオーラの出ていること。新しい事業でも始めるのか、それとも支店を新しく出すのか。一行は参拝を終えると玉砂利の音を残して内宮に向かった。

 

 伊勢神宮は面白い。いろんな人間模様が見えるから。人間だけではない。幹回りが5mもあるような千年を超えた神宮杉が何食わぬ顔で静かに生えている。鳥の声がどこからともなく聞こえてくる。神宮の森にしかいない昆虫たちが飛んでいる。美しい形の松の植木の庭園が広がっている。巫女達が舞う神楽が美しい。

 

 大理石でできた神殿は遺跡となった。檜でできた社は今も生きている。かって式年遷宮は大量森林破壊だと批判した人たちがいた。確かに多くの御用材に森林が伐られ、ここに運ばれてくる。しかし、20年を過ぎた社は解体され、全国の神社の新しい社となる。今回の遷宮では東日本大震災で壊れた東北の神社に送られ、再建に使われた。人々は御用材で切り倒された以上の苗木を植える。百年二百年後にはそれが御用材となる。式年遷宮は究極のリサイクル・リユースであり、永続可能な社会を1300年前から実現してきた証でもある。遙かなる時間と空間を越えてSDGsの具現化がここにある。

 

 

 伊勢神宮の公式チャンネルです。式年遷宮のことが短くまとめられています。