ここは三重県松阪市にある波氐神社です。祭られているのは多奈波太姫です。つまり祭神は七夕様ということ。ここは飛鳥時代から中国からの渡来人が住んでいて大陸の最先端の技術を日本に伝えていました。この七夕祭り、平安時代に貴族の間に広まり、今のように笹に短冊を飾って庶民が楽しむようになったのは江戸時代です。
星合というバス停があります。このバス停で織り姫と彦星が会っているのでしょうか?
赤い欄干の橋が鵲(かささぎ)橋です。七夕の夜、雨が降ると織り姫と牽牛は天の川の水が増水して会えません。鵲が橋を作って二人を会わせてくれるその橋です。
夏の夜空は豪華です。南北に天の川が流れ、夏の大三角形が瞬いています。ここ数年、七夕の日に星屑をまき散らしたような夜空を見たことがありません。天気予報ではこのような満天の空も期待薄です。
夏の大三角形はこと座のベガが織り姫、わし座のアルタイルが彦星です。これを見ると確かに天の川の両岸に明るく輝いています。はくちょう座のデネブは天の川の中に煌めいています。
ちなみにベガは地球から25光年、アルタイルは17光年、デネブは1400光年の距離にあります。ベガは太陽の30倍の明るさ、アルタイルは10倍、デネブは5400倍の明るさです。ベガが明るく見えるのは太陽の30倍の明るさであるともに、地球からの距離が25光年と比較的近いからです。一番遠いデネブは太陽の5400倍も明るいのに1400光年彼方にあるため大三角形の中では一番暗く見えます。織り姫のベガと彦星のアルタイルは14光年離れており、一晩で会うのは到底無理です。
江戸時代には桶に水を入れて水面に織り姫星と彦星を映して、2つの星がくっつくように桶を揺らして遊びました。ひよっとしたら14光年の時空を越えて桶の水面で二人が会えるかも知れません。
万葉集を編纂した大伴家持がこんな短歌を詠んでいます。
鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
七夕の夜、鵲が天の川に渡した橋に真っ白に降った霜を見ていたら、夜が更けてしまった。七夕の夜ですから、暑いはずですが家持は満天に真っ白にまき散らしたスターダストを霜に例えました。それに見とれていたら夜も深まってしまったというのです。今でこそ、松阪市の星合は民家が建ち並んでいますが、当時は漆黒の闇だったことでしょう。ステラナビゲーターで描いたコンピュータグラフィックのような満天の星が見えていたはずです。
七月七日は七夕ですが、この時期は梅雨なのでなかなか満天の夜空にはなりません。ここ星合地区で八月に七夕祭りを行います。伝統的七夕といわれるものです。八月になると梅雨も明けており、この方がどこを眺めても星屑をまき散らしたような真っ白な夜空になるでしょう。とりあえず、7日は晴れるといいですね。