三重県松阪市の旅 城下町と商人の街 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 松阪市は三重県中部の人口17万人の街です。街の真ん中には蒲生氏郷が建てた松阪城があります。石垣を一段上ると二の丸に着き、ここからは御城番屋敷の長屋が見えます。この街出身の歌手あべ静江さんが「コーヒーショップで」を歌っています。

 

古くから学生の街だった
数々の青春を知っていた
城跡の石段に腰おろし
本を読み涙する人もいた

そんな話をしてくれる
コーヒーショップのマスターも
今はフォークのギターをひいて
時の流れを見つめてる


服装や髪型が変っても
若いこはいつの日もいいものだ
人生の悲しみや愛のこと
うち明けて誰もみな旅立った

そんな話をしてくれる
コーヒーショップのマスターの
かれた似顔絵 私は描いて
なぜか心を安めてる

 

 歌に出てくる城跡の石垣はここのことかも。以前はお城公園内に市立図書館がありました。松阪市は甲子園で大阪桐蔭高校と決勝戦を戦った三重高校をはじめ、県立高校三校があり、学生の街でもあります。古くから喫茶店は市内に結構あり、歌詞に出てくるようなマスターも今でもいらっしゃいます。そのマスターも若いときは話すのが面白かったけど、年をとると人と話すのがおっくうになってうどん屋に転身など、それも松阪の一つの姿なのかも知れません。

 

 さらに石段を登って本丸にやって来ました。見下ろすと江戸時代の学者本居宣長の記念館があります。彼は一生を掛けて当時解読不能の古事記を読めるようにしました。儒教を中心とした考えの武家の世の中では源氏物語の主人公光源氏はドンファンのような次々と女性と関係を持っていく不道徳な男と考えられていましたが、それを「もののあわれ」と見て人々の考え方を変えました。源氏物語は今では世界で読まれています。

 

 本丸の石垣からは本丸本体と石垣が一体に作られていて、難攻不落の城だとよく分かります。かなり広くて戦国時代も鉄砲戦にも耐えられる本格的な作りになっています。右奥に天守閣が見えます。以前この建物はここをねぐらにして夜を明かしていた人の失火で今は青草の原です。そこに桜が植えられて春になると桜の下で宴会となります。

 

 築城名手の蒲生氏郷の本領が見られる高垣です。これなら攻め込まれないでしょう。下にはお堀跡が残っており、殿町の町並みが見えます。殿町、職人町、魚町など城下町の名残が各所に見られます。中には白粉町、おしろいまちと読みます。近くに水銀鉱山があり、辰砂でファウンデーションを作っていました。氏郷が松阪をどんな街として発展させていくのか、その意気込みが今でも分かります。松阪商人が木綿を江戸で売って活躍しました。三井六右衛門高利が江戸で掛け値なしで仕立て付という画期的な売り方で越後屋を築きました。それまでは客と店員がいかに値引きをさせるか、しかも着物は布で売っていて自分で仕立てるのが当たり前の世の中です。三井高利がいなければ今でもユニクロで店員とお客同士の値引き合戦やフリース生地の切り売りが残っていたかも知れません。「越後屋、お主も悪よのお」という時代劇の決まり台詞ですが、高利の商売気質はいたって真面目だったといいます。近年、長谷川家で大判小判がざくざく発見され、当時の松阪商人の繁栄ぶりに脚光が浴びました。

 

 松阪肉の老舗和田金はちょうど右の森の方向にあります。自前の牧場で肥育したお肉は最高ランクです。値段はピンからキリで細切れとよばれるお肉は百グラム四百円程度から。この細切れですが、骨に着いた肉をそいだ物で一番美味しい部位だと思います。なかなか地元でないと手に入りにくいかも。市内には牛すじを売るお店もあります。これは250円ぐらい。格安です。圧力鍋で処理すればふわとろの牛すじカレーが楽しめます。独特の芳香が松阪肉の特色ですが、牛すじまで松阪肉です。お肉屋にはコロッケですが、和田金には売っていません。丸中というお店はコロッケや串カツなど揚げ物も売っていて、お店で揚げてくれます。それを持って食べ歩いていると、細道へ。ウナギ屋さんやかまぼこ屋さん、八百屋さんなど昭和のたたずまいが残っています。

 

 お城からは山城がいくつも見えます。一番近くのは大河内城、そして白米城があります。白米城は織田軍政に攻められたとき、土手に白米をまいて水が豊富にあると見せかけ敵を欺いたといわれています。近くには多気町の城山、伊勢市近くには平城の玉城城まで、ここは中世の山城と近世の平城がこぞって見え、戦国の群雄割拠から近世の天下統一までを一望できる数少ない歴史スポットです。お城巡りマニアの方や戦国武将女子でなくてもここは一見の価値があります。

 

 市内からちょっと足を伸ばして、おやつにシャロンというお店でイチゴ氷をいただきました。ダイム農園というイチゴ農家がケーキ屋さんを開いたお店です。蜜は自前のイチゴをクラッシュして冷凍した物です。それに練乳が掛けられています。かき氷はふわふわ。製氷や氷をかく行程でどんな工夫がされているのでしょうか。氷を一気に食べても頭が痛くなりません。口の中に入った氷が脳の血管を収縮させて寒冷性頭痛を起こすことがあります。なぜかそんなことは起こりません。この器、紙でできています。折ったところを広げてみるとお皿になります。テーブルに持ってきてもらって驚いて、折り紙を広げてみて驚いて、美味しく食べる秘密がいっぱい隠されている一品です。