本州最南端の街から | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 紀伊半島の南端に橋杭岩という奇岩が南北に一直線に並んでいます。昔、弘法大師が大島まで渡る橋を一晩で架けようとしました。ところが、鬼が大師をだまして鳥の鳴き声を真似たので、大師は夜が明けたと勘違いして橋を作るのをやめました。今では、その橋桁だけが橋杭岩として残っているそうです。そんな伝説を感じさせる一直線に整然と並んだ橋杭岩は、なぜできたのでしょうか。

 

 実際に国土地理院の地図を見ると、南北に一直線に並んでいることが分かります。これは赤の矢印の方向に岩盤が力を受けて、その結果、青の矢印の方向に引き裂かれているからです。つまり、引き裂かれた中心に地中からの岩盤が出て、橋杭岩のような奇岩が形成されました。

 

 そう考えると、紀伊大島の海金剛にあるピラミッドの奇岩も同じ方向に向いていることが分かります。太平洋プレートが南から押し寄せ、南からの強い圧力で左右に引き裂かれ、岩盤が弱くなったところに地下深くからの岩盤が海中に突き出ている形です。

 

 お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、橋杭岩の近くには多くの砕けた岩が転がっています。大きさは3mを超える物もあります。これは津波の仕業なのでしょう。この残骸の量を見ると橋杭岩はもっと大きな形をしていたと考えられます。浸食が進んでいるので、パズルのように組み直すことはできませんが、ある程度の復元ができるかも知れません。

 

 つまり、紀伊半島、いや、日本列島の太平洋岸はどこもかしこも南海トラフの巨大地震の影響を受けてきた所であることが分かります。

 

 中央構造線にしても、橋杭岩や海金剛にしても地球規模のプレートや断層の圧力で引き裂かれ圧縮されて、パワーとパワーがせめぎ合っている場所なのでしょう。これをパワースポットと言うこともできます。そんな所だからこそ、自然は美しいのかも知れません。多くの人が訪れて引きつけてやまないのも、単に地形が美しいだけではなくて、むしろ地中のエネルギーが引きつけているのかも知れません。しかし、その力の均衡が外れたとき大災害をもたらします。私たちは、その狭間であるときは自然の恵みとして、あるときは災いとしてそれを受けているのでしょう。

 

 ここを訪れるとき、自然が創った美しさとともに、災いの歴史があったことを同時に気づかされます。そのとき、人はどう行動するか。あるときは、恵みを享受し、あるときは立ち向かわなければならないのでしょう。何度訪れても魅力的なのは、地中からわき起こるエネルギーにあると思いました。