驢馬の絵描きさん | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 桜の花びらが春風に吹かれて散っていきます。ロバさんがにわかに絵筆を取り出しました。インスピレーションがわいたのでしょうか。一気に書き上げました。昨日からの雨で道が濡れています。舗装された道には雨で水たまりができて、水面に桜が映って鏡のようです。上下に桜のシンメトリーができているのです。目をこらせば、上下感覚がなくなっていき、平衡感覚が失われ、ふわっとしてしまいそう。

 

 桜は寒いとき、ひたすら冬に耐えて、とてつもないエネルギーをためています。夏に緑の葉っぱを広げて、光合成をしたパワーは、樹皮に桜色を充填します。そして、春のなると桜の花びらの一葉一葉に爆発的に萌え出ます。

 

 美しいものが時の流れに下りてきます。作家はそれを言葉にして永遠にその一瞬を定着しようとします。それは暗黒の深い地中の中で、熱せられ圧縮されてできる純粋に透明に結晶した金剛石のような物なのでしょう。

 

 美しいものが時の流れに下りてきます。画家はそれを絵にして永遠にその一瞬を切り取ろうとします。あるとき、それは実物よりもリアルです。桜の存在そのもの、その有り様を現実よりも深く示すことがあるからです。

 

 気まぐれな春風が、桜を映した水面に風の足を残して吹き渡っていきます。それとともに、ピンク色の桜の花びらが雨のように降ります。もうここは桜も終盤。明日は春の嵐とともに、桜の季節を終わらせようとするのでしょうか。