少しだけ冬を見つけました | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 伊勢三山の麓には細々とした林道がたくさんあります。山の上のまた山の上に小さな街があります。向こうの山よりも高いところに棚田があり、段々畑があり、倉のある家があります。それは天空の街と呼んでもいいのかもしれません。朝になると霧が狭い谷にたまります。日が上がる前には霧が麓に立ち上り、風が霧を平らにします。雲海です。

 
 峠にはイチョウの巨木があります。イチョウの実が落ちています。小春日和の木漏れ日は、いつもよりもまぶしく感じます。峠は安らぎの空間です。なぜなのでしょう。急な細い林道は、峠でなだらかになり、やがて下り坂になります。その道ばたに、ひっそりと山イチゴが実をつけています。この赤が見られるともう冬も間近。

 
 山々の広葉樹が黄色や赤に変わり、落ち葉になります。麓を吹く秋風が、からからと、はらはらと紅葉した葉っぱを落としていきます。その下に緑の葉っぱの中から恥ずかしそうに山イチゴがこのとおり。

 
 一月の誕生石ガーネットのような宝石の輝きをしています。いったい誰がこれを食べるのでしょうか。秋が深まる伊勢三山に少しだけ冬が来ました。それは瞬く間に冬が来ることでしょう。秋、山の神の祭りが済むと、神々は山にこもります。冬の山は神々の住み処。来年、春の祭りが来るまで静かに凛としてお住まいになられます。峠を下りると、山頂から寒風が吹き下ろしてきました。小春日和は気まぐれです。