動作分析には、動画が必要になります。

 

 しかも右方向、左方向、後ろ方向からそれぞれ

 

 本当は上方向からの映像がほしいぐらい(笑)。

 

 できればラリーなどの生きているショットのほうがいいんですが、そうすると固定カメラが難しく、広角で撮影するか、もしくは小さくなってもいいので離れたところから撮影するしかありません。

 

 固定カメラでなければならないのは、前々回にお見せしたように、体やラケットの「軌道」を分析することが必須だからです。

 

 昔、ちょっと絶句したものがあって、その自称テニスコーチは、フォア・ハンドのインパクト~フォロースルーにおけるパームアウト(ワイパースウィング)否定派なんですが、いろいろな選手のインパクトの前後の写真をずらりと並べて、

 

「パームアウトしている様子が見られない」

 

 みたいなことが書いてあって(笑)。

 

 インパクトの直前では、ラケットヘッドが下がりきっており、インパクトの直後はすぐにラケットヘッドが上がった画像がないとおかしい、みたいなことが書いてありました。

 

 静止画で判断するヤツには、そういうおかしなことを言うヤツも出てきてしまう。

 

 だからこそ、動作解析は動画でなければならないのです。

 

 さらに、動きを分析するためには、隅々まで動きをみなければいけません。

 

「原因」「過程」「結果」すべてに目を配らなければいけません

 

 例えば、サーブを打つときの間違った指導として「体を横に向けた『まま』打つ」というのがあるんですよ、とお話したことがあります。

 

 そして、これを実現させるための手法として、顔を、サーブのインパクトが見えるように上方を向いたままスウィングすると、体の横向きが維持できますよ、というものがあるわけです。

 

 これも以前お話した「間違った理論を実現するためのトンチンカンな技術」の一つになるのですが、これは特に、静止画でサーブの分析をしてしまうと起こりえる、典型的な例、とも言えます。

 

 たとえば、次の画像を御覧ください。

 

 

 確かに、これだけをいると、インパクトの瞬間、フェデラーの顔がインパクト方向、つまり上方向を向いているように「見えて」しまいます

 

 が、次の動画、そして、その抽出画像を見てください。

 

 

 どうですか?おわかりですか?

 

 そう、明らかにフェデラーの顔は、スウィングに同調して「前方」を向く「途中」でしかないことが分かる

 

 ぜひ、元動画もご覧ください

 

 少なくとも、インパクトの時には、顔の向きが前方を向いていることが分かると思います。

 

 ましてや、顔を右側(上側)に向け直すぐらい意識することで体を横向きに保つ、なんていう方法がどれだけ馬鹿げているか、すぐに分かるわけです。

 

 だからこそ、動きというのは動画で、しかもさまざまな方向のものを活用して、分析しないといけない

 

 にもかかわらず、そういう分析をせずに、1枚の印象的な静止画──1枚目のような画像だけを基に、

 

「体を横向きに維持するために、顔もずっと上を向いているべき」

 

「顔の方向を残すことで、体の開きが開かないようにできる」

 

 というふうに言い続けている人が、ちらほら見られます。

 

 分析しているにも関わらず、気づかないふりをしているのか、もしくは「これはプロだからできること」とか「私が自分なりに考えだしたプロもやっていない工夫」だと自賛しているのか。

 

 いずれにせよ、同じプロのフォームの分析の仕方で、これだけの理論の違いが生じてしまうわけです。

 

 だからこそ、他人が考えた理論に「依存」してはいけない。

 

 かといって、独自の理論に「固執」してはいけない。

 

 あくまでもバランスなのです。

 

 何度も言いますが、一人のコーチ自身の動きが変、というのは全然構わない

 

 ただし、変な動きのコーチが「自分のフォーム」を、動きの原理を説明する「材料」としてだけでなく、「良い例」として説明するのはダメです。

 

 自分の動きがおかしいのに、それを「良い例」「成功例」として紹介している人は、確実に理論が間違っているからです。

 

 そこは、YouTubeなどの動画でもよく分かることだと思いますので、参考にしてみてください。

 

【次回へ続く】