チームビルディングの話のついで、ということになるでしょうか。

 

 本来、チームビルディングのなかで想定している「意見の交換」は、戦術の違いや試合での問題点の確認、練習方法の選択やチームの目標についてなど、いわゆる「次元の高いもの」です。

 

 ただ、実際の高校生──いや、普通の社会人やプロにおいても、チームメイトの「ミス」を、ただただ強く叱責するだけで終わってしまうときがあります。

 

 それは決して「意見の交換」ではないのですが、概して、誰かのミスがチームの問題点につながっていることも多く難しい。

 

「チームメイトがミスをしたときには、笑ってツッコむ」というのが良い方法なのだ、と「仲が良いのは悪いこと? その9」でもお話ししましたが、そのミスが勝敗に関わるような重大なものであったり、何度も同じミスを繰り返していたりすれば、怒りたくもなる(笑)。

 

 しかしそれは、ただただミスを叱責された選手が「次から気をつければ」なくなるようなミスなのか?(笑)

 

 そんなミスばかりではないはずです。

 

 結局は、普段の練習の取り組みであったり、試合に臨む態度であったり、根本的な問題であることがほとんど。

 

 今回はそこら辺を、順に考察していきたいと思います。

 


 

 以前「ミスの原因」シリーズでお話ししたとおり、プレイでのミスには3段階存在します。

 

ミスの原因

 

 テニスを例に考えてみましょう。

 

「第1段階 : 状況の把握・判断」とは、相手のショットの速さ、高さ、角度、サーフェスなどを正確に把握し、ボールがどこにどのように飛んでくるのかを判断(予測)することです。

 

 それをミスするときがある。

 

 スライスだと分かっていないとか、バウンド地点やバウンドの高さを見誤って、距離感を間違えて打てないときがあります。

 

「第2段階 : 選択」は、ボールのバウンド地点やバウンドの高さを正確に予測しながらも、自分の立ち位置を間違えてしまったり、相手ショットの速度は分かっていながら、自分の動きがゆっくりで間に合わなかったりしてしまうことです。

 

「第3段階 : 技術」は、技能が低く、ラケットの端に当たってしまったり、スウィングが遅いことでタイミングが合わなかったりすることです。

 

 つまり、同じ「距離感が合わずに打てなかった」というミスであっても、ミスの原因が根本的に異なることがよくある、ということです。

 

 例えば、振り遅れでミスをしたときも、第1段階での把握が甘く、思わぬ速さでボールが飛んできたのかもしれませんし、第1段階や第2段階での判断や選択そのものに時間がかかったからかもしれない。

 

 また、できもしないのに相手の速いショットをさらに速く打ち返そうとして、テイクバックが大きくなってしまう、なんてこともよくあるのですが、これは「第2段階 : 選択のミス」であるのと同時に、速く打ち返せないという「第3段階 : 技術的なミス」でもあるわけで、これらのミスも複雑に絡み合っている、ということになります。

 

 ということは、試合中に選手がミスをした際、それに対して怒っているチームメイトは、そのミスの「段階」を把握した上でちゃんと怒っているのか、重要になってきます。

 

 たとえばわかりやすいのは、サッカーのパスをミスしたとき。

 

 第1段階で、相手チームのマークを確認しきれずにパスをしたのかもしれないですし、味方選手の足の速さを見誤って、飛び出してくれると思っていたのに間に合ってくれなかった、ということかもしれない。

 

 第2段階で、ほかにもフリーの選手がいたのに、マークが厳しい選手を選択してしてしまったのかもしれないし、もっとボールを保持してタメを作ってから出した方が良かったのに、早く出しすぎてしまったのかもしれない。

 

 そして第3段階として、単にキックミスをしただけ、かもしれない。

 

 パスを受けるはずのチームメイトが、

 

「おい!そんな前に出したって、届くわけねえだろ!」

 

 って怒ったとして、それは本当に正しい指摘なのでしょうか?

 

 ここら辺は、実際に話し合いをして突き詰めるしかないはずなのです。

 

 そう考えると、味方のミスに対して試合中に怒ったとしても意味がない、ということがなんとなく分かっていただけると思います。

 

 また逆に、誰かがミスをしても、傷をなめ合うように、そして腫れ物に触るかのように、全く指摘をしわない、というのもまた、チーム力の向上にはマイナスです。

 

「意見を交換できないチーム」が強くなることはないのですから。

 

【次回へ続く】