意見の交換が進むようになると、どうしてもお互いの意見の「差異」が明確になり、マトリクスの左側に偏ることになるわけですが、これもそのまま放っておく──つまり人間関係が良くないままだと、いずれまた意見の交換が衝突の繰り返しだけに終始したり、意見の交換さえもしなくなる事態になります。
ですから、常にフォーローとケアが必要です。
これは顧問・監督やムードメーカーの仕事になります。
採用されなかった選手の意見にも、利点を見いだして褒めたり、一部だけでも採用したり。
なぜ意見が採用されなかったのか、ということを伝えることも重要です。
また、練習中にはどうしてもマトリクスの左側に偏ってしまう人間関係を、アイスブレイクを繰り返すことで、練習とそれ以外の時間を一旦切り離すようにして、人間関係を修正したりします。
これもまた、中途半端に指導力を示したくなる顧問・監督は、
「一度みんなで決めたことには、絶対に従え」
という理想論だけを言うだけで終わってしまうのです。
そういうのは、ちゃんとした人間関係ができてこそ成り立つルールなのだ、ということを忘れてはいけません。
特に、意見の衝突が、個人の人格攻撃につながったり、最悪、いじめや孤立につながるのはもってのほかです。
また、その意見の衝突が起こっている間、チーム状況が悪くなる可能性もあります。
様々な意見を採用して「やってみる」という状態になることもあるので、なかなか勝てなかったり、理想とするプレイができなかったり。
そんなときに、顧問・監督が、
「このままじゃ勝てないぞ!!!早くなんとかしろ!!」
などと焦ると、C象限からの移行を急ぐ方向、もしくはC象限からの移行を諦める方向に走るのです。
「意見の交換」というのはあくまでも相手あってのことです。
一方的に自分の意見を押しつけたり、誰かの意見に盲目的に追従するのでは、意味がありません。
ましてや、誰かのミスをあげつらうことを「意見」とは言わない。
勝つためにはどうしたら良いか、という、いわば「提案」でなければいけません。
そしてそれは、現実的な解決方法も含めたものでなければいけません。
「なんで、あそこであんなシュートを外したんだよ!」
と攻めるだけでなく、そういうシュートを外してしまった原因を聞き出したり、それを確実に入れるような練習を、次から提案したりして始めて「意見の交換」につながるのです。
逆に、他人のミスに、腫れ物を触るようにして全く触れない、というのも違います。
「他人のミスは、笑いながらツッコむ」
というのが、一番バランスが取れている。
ただただ怒るのでもなく、馬鹿にするのでもなく、ましてやなかったことにするのでもなく。
しかし、これこそ、親密な人間関係がないとできないこと。
だからこそ「意見の交換」だけにとらわれず、人間関係の構築・修復を常に並行しながらやっていくことで、A象限への移行がスムーズに行えるようになると思います。
【次回へ続く】