今回は、チームの目標が「強いチームになること」であることを、選手全員が一応は共有していることを前提にお話しします。
C象限にいるチームが目指すべき移行の方向は、次の図のようなものになります。
イメージは、緩やかに曲線を描きながら、C象限→B象限→A象限へと移行する。
もちろん、できるだけ弧が小さくなり、短期間のうちにA象限に移行できるに越したことはありませんが、下手に弧を小さくしようと、C象限の中でぐるぐる回るだけになりますし、
B象限への移行を性急に実現しようとすると、D象限に深くはまってしまいます。
このさじ加減が、顧問や監督の力量にかかっている。
そして、それを支えるのが信頼されているキャプテンであったり、ムードメーカーと呼ばれるチームメイトであるのです。
まず、C象限の中でぐるぐる回るだけになる状態を具体的に考えていきましょう。
前提として、C象限→A象限への理想的な移行は難しい、というものがあります。
C象限から上方向へ移行するために「意見の交換」をしようとすると、どうしても「意見の衝突」に発展するときが多いからです。
この「意見の衝突」無しに、移行できるのであればそれに越したことはないのですが、よほどチームメイト全員の人間性が素晴らしいか、抜群のファシリテーターがいない限り、C象限からの脱却には、少なからず、マトリクスの左方向へのスライドは避けられない。
これを、顧問や監督は「覚悟」しなければいけません。
できれば、それを選手たちも「覚悟」できているほうがよい。
例えば、戦術や技術的、下手をすると練習に対する態度、などについて「意見の交換」がされた場合、「意見の交換」の仕方が慣れていないチームや選手だったりすると、どうしてもただの「意見の言い合い」「意見の一方的な主張」で終始してしまい、チームの雰囲気が悪くなるときがあります。
これがマトリクスの左方向へのスライド、になるわけです。
このとき、この左方向へのスライドに対しての「覚悟」が乏しい監督やキャプテン、そしてそれを嫌がる選手がいると、
「キャプテンを中心に、チームが一丸にならないといけない」
とか、
「目標に向かって、足並みをそろえよう」
という「きれい事」を盾にして、中途半端に「まとめよう」としてしまいます。
つまり、せっかくB象限へ偏りながらも、上方向へ移行しようとしているところを、引き留めてUターンさせてしまい、いつまで経ってもC象限のまま、ということになるのです。
もともと、C象限の「居心地」は、決して悪くありません。
「強くなることでの心地よさ」を知らない──つまり「負け癖」がついているチームはなおさらです。
B象限を経験するぐらいなら(A象限にすぐにいけないのなら)、C象限のままでいい、と無意識のうちに思ってしまいます。
いやC象限でもいい、と思っているというか「今の状態で強くなれるといいなぁ」という願望を持っていたり「今の状態でも強くなれるんじゃないかなぁ」と楽観視してしまっているのです。
つまり上方向への移行無しに「勝てる」「勝ちたい」と、妄想している状態です。
だから、そういうときに、いくら顧問が、
「おまえら、勝ちたくないのか!」
って叱っても響かない。
「え?勝ちたいですよ?」
で終わりだから(笑)。
だからこそ、顧問や監督は「覚悟」が必要なのです。
「負けることの悔しさ」や「勝つことの心地よさ」を感じさせる──今のままでは「強くなる」という目標は実現できないと痛感させるためには、何回も「ボロボロに負ける」という経験と「練習でやったことを発揮して勝てた」という経験を繰り返すしかない。
時間がかかるのです。
そしてそれは、ひとつの学年の生徒が部活動に在籍する1年や2年ですぐにできるものではなく、チームとして積み重ねる必要がある。
それこそが伝統校の強さの秘密だと思います。
【次回へ続く】