動きの「速さ」でいうと、スポーツ理論の中では「SAQ」という言葉がよく使われています。
S:Speed(スピード)
A:Agility(アジリティ)
Q:Quickness(クイックネス)
のそれぞれ頭文字をとったものです。
一応、いろいろな本では「訳語」を当ててはいるのですが、S=最高速度、A=敏捷性、はいいとして、Q=すばやさ、っていうのがどうもかっこ悪い(笑)。
ですので、それぞれの意味するところを、文章で理解していただくほうがよいと思います。
言葉の順番は「SAQ」ですが、実際の動きとしては「QSA」の順番になります。
① 「Q」→刺激に反応して早く動き出す能力
いうなればスタートダッシュのことです。
単純に走り出しだけでなく、 速く「反応する」ことも含めた広い意味も持ちます。
目や耳から得た情報をもとに、すばやく身体を反応させて動かし始めるためには、的確なトレーニングが必要になります。
間違った動きを開始しては意味がありませんし、かといって考えてから動き始めていては、どんなに筋力トレーニングをしても意味が無くなってしまうことになります。
②「S」→重心移動の速さ
まさに文字通り「スピード」です。
最大速度、トップスピードともいいます。
テニスの場合、個人競技としては最大級にプレイエリアが広いスポーツではありますが、それでも100m走ほどのトップスピードが出ることはありません。
また「ショットを打つ」という目的のため、身体の向きやストップすることを前提とした移動のため、フットワークの善し悪しが如実に出てしまいます。
したがって、テニスにおいての「移動の速さ」は「Quickness」と「Speed」の組み合わせによって決まることになります。
③「A」→移動方向の切り替えの早さ
日本語に表すとすれば「敏捷性」と呼ばれるもので、イメージでいうと、サッカーやバスケットボールでのドリブルで、左右に切り替えしながら進む能力です。
いわゆる「アンクル・ブレイク」というやつですね。
したがって、テニスという競技特性の中では、活用する場面は少ないと思います。
「動きながら切り返す」という場面がほとんど無い。
かならず切り返す直前に「止まる」瞬間があるため、「Quickness」によるところが大きいのですが、広い意味での「Agility」として認識するのであれば、これも「敏捷性」に当たると思います。
実際には、この「Agility」の定義そのものが難しく、それは「Speed」にも「Quickness」にも言えることなので、全部が深く連携している、と思ってもらったほうがよいと思います。
まずは、自分に必要な(現在不足している)能力として「SAQ」のどれを優先的に鍛えるべきなのか、いろいろと探ってみましょう。
【次回へ続く】