テニスの道具──ラケット、ストリングス、ボールについては、いわゆる「都市伝説」がかなり蔓延しています
 
 たとえばボールをつぶす?」シリーズでもご紹介していますが、ボールをつぶすように打つことそのもので、ボールスピードが上がることもなければ、するどいトップスピンになることもない。
 
 あえて言うならば、
 
ボールがつぶれるぐらい強いスイングで打てば、ボールのスピードが上がって当たり前だし、トップスピンの回転数も上がって当たり前
 
 ということになるのですが、未だに、Yahoo!知恵袋では、ボールをつぶす方法を聞こうとする質問が後をたちません。
 
 そのなかで、Yahoo!知恵袋で、ちょっと気になることがあるので、それを書いてみようと思いました。
 
 それは、ストリングスのテンションに関する「表現」と「実際」の違い、についてです。
 
 これだけだと、何を言ってるのか分かりませんが(笑)。
 
 こういうときには、すごく極端な例を出すとわかりやすい。
 
 想像しながら、お読みくださいね。
 
 たとえば、ストリングスの代わりに太い針金をラケットに張ったとします。
 
 すごく「硬い」ですよね。
 
 当たり前です。金属なんだから。
 
 次に、ストリングス代わりに太く弾力の強いゴムをラケットに張ったとします。
 
 まあ、針金よりは「柔らかい」ですよね。
 
 この2つでボールを打った場合、もちろんゴムの弾性にもよりますが、「針金よりは柔らかい」ゴムのほうが、ボールは飛んでくれることが多いはずです。
 
 想像できましたか?
 
 次に、同じく太く弾性の強いゴムをストリングス代わりにラケットに張ったものを1本。
 
 もう1本は、同じ素材だけど「細い」ゴムをストリングス代わりにラケットに張ったものを1本作ります。
 
 後者の「細い」ゴムの方が、「柔らかい」はずですよね?
 
 さあ、この2本でボールを打った場合は、どちらが飛ぶと思います?
 
 皆さん、輪ゴムで顔とかに「ベチッ」ってされるとしたら、太いのと細いの、どっちが痛いですか?(笑)。
 
 そう、同じ素材であれば、太い方が弾性が強いので、ボールがよく飛んでいくんです。
 
 当たり前と言えば当たり前ですよね、ゴムの弾性は断面積の広さに影響されるんですから。
 
 いや、実は、これにも「裏」があるのですが、それは別の話。
 
 今回、分かっていただきたいのは、ストリングスの「硬い」とか「柔らかい」っていう表現を、ボールの「飛び」に「単純化して」関連づけようとすることが、どれほどいい加減なモノなのか、ということなんです。
 
 1つ目の思考実験は、実は「素材の違い」
 
 2つ目の思考実験は、「引っ張る力の違い」
 
 実は、この二つを比べること自体、全くのナンセンスなんです。
 
 それをあえてやりました。
 
 なぜなら、テニスの技術論の中で、あまりにも、
 
「ストリングスは『柔らかい』ほうが飛ぶ」
 
 という、間違ってはいないけれど正確ではない言い回しが、広まりすぎているからです。
 
 つまり、「素材の違い」と「引っ張る力の違い」をまぜこぜにして質問したり、回答したりしてしまっている人がすごく多い。
 
 ポリエチレン系のストリングスと、ナイロン系のストリングスを比べると、もちろんナイロン系のストリングスのほうが「柔らかく」さらに「飛び」ます。
 
 が、これが誤解のもと。
 
 同じ素材のストリングスの場合、面圧が「柔らかい」ことが、ボールが「飛ぶ」ことに直結していないことは多々あるんです。
 
 細いゴムが、結局ボールを飛ばす力が弱いのと同じように。
 
 でも、これを分からずに「柔らかい=ボールが飛ぶ」っていう方程式を、強引に当てはめようとするから、とんでもないことになる
 
 ストリングスのテンションについては、
 
「スウィングスピードとストリングスの弾性によって、もっとも適度なテンションが存在する」
 
 というのが、僕の考えなのですが、それは別の記事で。
 
 とりあえず、その「柔らかい」とか「硬い」っていう表現を、「素材の違い」と「テンションの違い」で、ちゃんと使い分けてますか?ってことが言いたいんです。
 

 
 なぜ、こんなことを急に言い出したかというと、これまた某自称コーチの解答が、非科学的なものだったからです。
 
 その質問が、こちら。
 
 
 下にある、某自称コーチの回答がポイントです。
 
>某自称コーチ
ナイロン(ポリアミド)の特徴は温度に敏感。温度が上がると素材が柔らかくなり逆に、温度が下がると固くなります。
 
 ここは、いいですね?
 
 これぐらいは、小学生でも分かる(笑)。
 
 温度が高くなると、確かにナイロンは「柔らかく」なります。
 
 が!!!!(笑)、その続き。
 
>某自称コーチ
現象としては寒いと打球の飛ぶ距離が少なくなり、暖かくなると飛ぶ距離が伸びる。
 
 ・・・・・ね?物理・化学をがっつり勉強した方は、もうお分かりのはずです。
 
 馬鹿げてるでしょ?
 
 これですよ、これ。
 
「柔らかい=ボールが飛ぶ」っていう方程式を強引に当てはめようとする、典型的な例です。
 
 次のサイトをご覧ください。
 
 
 図2~5は、ナイロンの引張強さと温度との関係を示したグラフです。
 
 おわかりですか?
 
 ナイロンは、温度を上げると、弾性が低下するんです!!!!
 
 ナイロンの「柔らかさ」は、弾性が低下することなんです!!!!
 
 温度によるボールの飛びは、ボール自身の温度変化による、ゴムの弾性変化と内気圧の変化が大きく影響しているだけです。
 
 この人は何でもかんでもテンションを下げればボールが飛んでくもんだと思い込んでるから、物質化学の基本的な内容も確かめずに、その場の思いつきで答える
 
 たぶん「熱可塑性」って言葉の意味さえ知らないか、間違って覚えてるか。
 
 自分の化学・物理に関する知識の浅さを、全く理解できてない。
 
 この質問の回答だって、前半だけで止めときゃ良いのに、知ったかぶりして自分の理論を披露しようとするもんだから、思いっきり墓穴を掘っている。
 
 まあある意味、自分の馬鹿さ加減に気づかないっていうのは、生きていく上では必要な能力なのかもしれませんがね。
 

 
 今回のことについては、馬鹿らしすぎて、僕はYahoo!知恵袋のほうでは回答してない。
 
 逆に今、僕が回答すると質問者さんに迷惑がかかる可能性が高いのと、質問者さんの知識にもそれほど影響がないはずですから。
 
 このまま、質問が確定すれば、もう、その間違った回答も消せませんからな。
 
 こそこそとこのブログを読みに来ているようですし(笑)、そしたら、回答を消すでしょう。
 
 自分のプライド優先して、質問者さんに「嘘」を教えるようでは、、、ねぇ?
 
 大人なんだから、自分の尻は自分で拭かないとね。
 
 これを読めば読むほど、自分のプライドを優先させて、消さないでしょうけどね(笑)。