以前の「練習メニューの組み方 その9」でも書きましたが、全体でラリー練習をさせるときには、できるだけラリー相手が固定しないようにします
 
 これは、ただただ僕の「方針」でしかなく、コーチによって、もしくはチームによって違うものです。
 
 チームによっては、チーム内の実力順にきっちりと分け、上手い選手は上手い選手どうし、でラリーをするような形になっている場合が多くあります。
 
 複数のコートがあれば、部内でのランキングごとにコートが違ったり。
 
 チーム内で1軍、2軍、またはAチーム、Bチームと分けている場合もありますから。
 
 僕も、自分がそうであった経験から、レベルわけ・グループ分けをしていた時期もあったのですが、最近はできるだけ全体・全員が入り交じった練習をするようにしています
 
 もちろん、大会前になれば、出場選手を中心としたメニューにならざるを得なくはなるのですが、普段の練習から1軍・2軍と分けることはありません。
 
 まあ、そんなに人数もいないんですが(笑)
 
 また、試合形式やポイントラリー以外で「出場選手だけのメニュー」というものはできるだけ作らないようにしています。
 
 たとえば、ボレーボレーをするとき、10人ぐらいメンバーがいるとします。
 
 そんなときはまず、ジャンケンなどでペアをランダムに組ませて、ネットを挟んでボレーボレーをします。
 
 3列ぐらいで並んで入れるとして、2ペアは後ろで待機。
 
 2球ミスをしたら交替、というふうにします。
 
 3分なら3分と時間を決め、時間が来たらネットの手前にいる5人、ネットの奥にいる5人でそれぞれ2人ずつ入れ替えをし、あらたに①~⑤の番号をジャンケンなどで決めて、ネットを挟んで同じ番号の選手どうしでペアを組み直しです。
 
 もちろん、僕はこれまで20人を超える大所帯の部活動を担当したことはありませんから、そんな悠長なことを言っていられるのかもしれません。
 
 また、そういうことをしているから「シード常連校」というのになれないのだとも思いますが(笑)、それでも、感覚的に、そういう「全体で同じメニューに取り組む」とか「レベルに関係なく同じメニューをこなす」ということをするようになってから、チームの底上げができるようになったと思います
 
 そしてなにより、選手が全員で「チーム」としての意識を持ちやすい。
 
 たとえば、駅伝で有名な青山学院大学陸上部などは、原監督が寮を運営しているのですが、2軍寮、というのもあるそうです。
 
 1軍寮は、奥様が寮母をされているのですが、2軍寮はすべて自分たちで行う。
 
 そうやっていくなかで、競争意識を植え付ける、というのが目的らしいです。
 
 やはりそこは、監督の考え方一つ、そして、チームの方針によるのです。
 
 特に、全国から選抜された意識の高い選手が集まってきたチームの場合、そういう「チーム内での競争」を全面に出した方が、圧倒的に上手くいきます
 
「切磋琢磨」ということを繰り返すことで、「チーム」を作っていけるわけです。
 
 が、うちのチームのように、初心者が毎年入部し、その生徒たちをチームの中心選手にまで育てなければならないようなチームの場合は、チーム内での競争を全面に押し出すのはなかなか難しい。
 
「みんなで上手くなろう」という意味での「切磋琢磨」を、少なくとも建前にしなければ、今時の女子高校生はついてきません(笑)
 
 そのために、あえて、みんなで同じメニューをこなすことを多く行うのです。
 
 同じメニューを同時にみんなでこなすなかで、僕はかなり細かい指示を出します。
 
 フットワークからショットの狙う位置や強さまで。
 
 その上で、みんなで同じメニューをこなすと、普通の高校生なら、自分の実力というものをちゃんと理解できるようになるのです。
 
 明らかに、自分ができているのかできていないのかが分かりますから。
 
 つまり、普段の練習から、僕が求めているプレイをできているかどうか品定めをされている、ということを、選手たちに分からせなければならない。
 
 これを、ただただ「来たボールを打ち返す」というような漫然とした球出しなどをしてしまうとダメなんです。
 
 僕が普段からどういうプレイを理想とし、どういう技能を身につければ試合に勝てるのか、ということをはっきりと選手に示す
 
 その上で、部内戦をし、出場選手のランキングなどを決定すれば、まず生徒も納得してくれます。
 
「出場メンバーになりたかった」という悔しさを抱く選手はいても、「○○さんより、私のほうが上手いのに」という不満が表面化することはありません。
 
 ただ、そのためにはその練習通りのことをしていれば試合に勝てるのだ、という実績を、選抜された選手が示してくれることが大切ですけれど(笑)。
 
 逆に、チーム内での競争を全面に出している原監督などは、細かい指示は出さない
 
 さらに、練習においては選手自身に任せる一方、「普段の練習で真面目に取り組んでいるから」とか「練習の時はがんばってるから」っていう選び方はない。
 
 あくまでも実力主義を貫き、大会前の選抜のための部内戦は熾烈なわけです。
 
 ですから、練習メニューの組み方、というのは、指導方針と大きくリンクするものなのです。
 
 みなさんも、練習メニューを組むときには、ぜひ、チームとしてどういう方向性を見ているのかを考えながら、やってみてください。