このブログの訪問者で、10代の方は数%しかいないのですが(笑)、そのわずかな中の高校生から、審判についてのご質問をメールでいただきました。
 
 内容は審判の進行の仕方やコールについて、基本的なことです。
 
 顧問の先生からの指導がなく、生徒だけで練習しているため、よく大会などでトラブルになることがある、ということでした。
 
 高体連が主催するような大会の場合、多くは選手同士で審判を行います
 
 たとえば、バレーボールやバスケットボールなどであれば、審判資格を持った教員が順番で行ったり、協会から審判員を派遣してもらったりするのですが、テニスの場合、大きな会場だと20面ぐらいのところで一気に試合をこなしていくため、そういうわけにはいかないからです。
 
 協会主催のジュニア大会ではセルフジャッジ。
 
 したがって、選手の「ジャッジ能力」を鍛えないと、トラブルの元になります。
 
 部活動としての体(てい)をなしていないチームは、やはり審判能力も低い傾向にあります
 
 普段の練習の中で「審判の練習」というのは、生徒だけではなかなか思いつきませんから、顧問が意識をして主導しなければなりませんし、技術的なものと同じで、ちゃんと「指導」が入らなければ上手く試合を運営することができないからです。
 
 また、これも一般論ではありますが、プレイヤーとしての能力と審判としての能力には大きな相関があります
 
 強い選手、上手い選手というのは、ボールを見る「眼」が養われているので、イン・アウトのジャッジがかなり的確です。
 
 今回は、質問者さんからいただいたメールを下に、チェアアンパイアが付くような試合、そして自分がチェアアンパイアになる可能性のあるプレイヤーに向けて「審判の仕事」を中心に、セルフジャッジについても言及しながら、よくある場面を設定して見ていきたいと思います。
 

1.「レット」のかけ方

 高体連の試合などは、公営のテニスコートで、横並びで一斉にゲームを行います。
 
 コートとコートの間も狭く、ボールフェンス(コート間の衝立)などを置いてない場合も多いので、隣のボールが転がってきたときに「レット」をかける場面が多くあります
 
 サービスがネットに触れながら入ったときの「レット」とは違い、ファースト・サービスからやり直しになりますし、長ーーーいラリーの途中で、チョロチョロっとボールが入ってきたときにレットを賭けるのはなかなか勇気がいります(笑)。
 
 入ってくる速さやどれぐらい内側に入ってきたのか、という基準も非常に難しいものではあるのですが、それでもプレイの「公平性」を保つためには、どんなときにも、ボールが転がってきたときには「レット」をかけるべきです。
 
 これも、普段の練習でやらないとなかなかできない。
 
 また、たとえば僕などは、自分のチームの選手が審判をしていて「レット」をかけなかったときには、厳しく注意をします。
 
 それぐらいやらないと、この「レット」をかけることはなかなかできるようにならないからです。
 
 これも、良い選手は視野が広いのですぐにボールを見つけられるのですが、下手な選手ほど視野が狭く(笑)、選手も観客もボールパーソンさえもみんなが気になっているボールを、審判だけが気づかない、ってことがよくありますので注意しましょう。
 
 さて、この「レット」のかけるタイミングが非常に難しい。
 
 もちろん隣のコートからボールが転がってきた瞬間に「レット」をかけるのですが、問題は自分たちのコートのプレイも同時に判断しなければならないことです。
 
 一番の理想は、深く強くは返球できないけれど、ミスをするほどのものでもない、というようなショットが入った瞬間~相手が打つまでのわずかな間に「レット」をかけることです。
 
 これが、明らかに短いミスショットに対して、相手がダッシュしてウィナーを打つ直前や打った瞬間に「レット」をかけてしまうと、とんでもないことになります。
 
「レットをかけなければ、ウィナーでポイントが決まっていたのに」
 
 ということになりかねないからです。
 
 逆に、深く鋭くショットが入り、それ自体がウィナーになるような可能性のあるショットで「レット」をかけてしまった場合、もっとややこしい。
 
 相手がそれでも返球してくれればよいのですが、相手がショットを見送ったり、ミスをしてしまったときは、
 
レットをかけたことで相手選手がショットを見送ったり、気が抜けてミスをしたのか、それともそもそもウィナー級のショットだったので『レット』の有無にかかわらず、ポイントとなっていたのか
 
 という判断を主審はしなければなりません。
 
 そういう点で、一番ダメなのは、選手が打った直後に「レット」をかけることです。
 
 そのショットがアウトだと、打った本人は「ラッキー」で済みますが、相手プレイヤーには納得のいかないものになりますし、入っていたら入っていたで、ウィナー級だったどうかを判断する必要がありますから。
 
 ですから、実はレットをかけるのには2点、注意が必要です。
 
1.視野を広く持ち、ボールが入ってきたことを瞬時に察知すること
 
2.ボールが入ってきたことを察知した瞬間にも、すぐにプレイを確認して的確なタイミングで「レット」をかけること。
 
 これに注意しながら、それ用の練習をする必要があるのです。
 
 ちなみに、サーブの前にボールが転がってきた場合には、
 
「Wait please」
 
 とコールするのが正しい。
 
 ただ、選手がそのコールを知らない可能性があり(笑)、「ストップ!」とか「ちょっと待ってくださ-い」って言った方がわかりやすいかもしれませんね。
 
 また、セカンドサーブを打つ前にボールが転がってきて「レット」とコールしてしまうと、訳が分からなくなりますから気をつけてください。
 
「レット」とコールしてしまうと「ポイント・レット」のことになり、ファーストサーブからのやり直しを意味しますから。
 
 セルフジャッジでのレットについて、新しいルールブックでは、相手コート側にボールが転がってきた場合にもレットをかけられるようになりました
 
 草トーナメントに参加する場合、いまだに古いルールブックだけしか見ていない人もいますので、必ず事前に確認するか、自身でルールブックを準備しておくのが良いかと思います。
 
【次回へ続く】