前回で、横方向の1歩目はよろしいですね。
 
 問題は後方への1歩目です。
 
 まず、後方への移動で絶対やってはいけないのは、前を向きながら後ずさりするように下がること
 
 初心者、初級者の人がやってしまう下がり方です。
 
 ボールが上がった瞬間、フォアかバックかを瞬時に判断し、その方向に体を反転させて、クロスステップで移動する
 
 これが基本です。
 
 これができると、前々回にもお話しした「し」の字型の移動もスムーズに行えます。
 
 問題は、そのクロスステップを引き出すための1歩目です。
 
 たとえば、右利きの選手がまずフォアと判断し、さらに後ろに下がらなければならないと判断した瞬間、1歩目から右足を引くように動かすと、いわゆる「後ずさり」を誘発するうえに、最終的な移動も遅くなってしまいます。
 
 これも「重心移動を最優先にする」というのは、横移動のときと変わりません。
 
 が、それには少し工夫が必要です。
 
 その工夫とは「左足で小さく1歩前に出る」です。
 
 このときの踏み出し方にもちょっとした工夫が必要です。
 
 左つま先を右に向けるようにして拇指球から踏み込み、それと同時に上半身の反転も開始します
 
 さらに踏み込んだ瞬間に生じる伸張反射で左足の「蹴り」が生じたら、すかさず右足を後ろに大きく踏み出すのです。
 
 そしてその次に左足をクロスステップさせていくのです。
 
 これは、スマッシュのときにも同じフットワークになります。
 
 中級者でもやってしまうのは、サイドステップで下がることです。
 
 クロスステップになると、どうしても相手、そしてボールに対して背中を向けるような形になるので、不安になってしまい、顔を前に向けやすく、かといって後ずさりタイプでもないサイドステップになる人が多い。
 
 しかし、これはダメです。
 
 遅い
 
 1歩程度下がるだけなら、十分に間に合うかもしれませんが、2mも3mも下がらなければならないときには、0.1秒の遅れが命取りになります。
 
 さらに、1mならサイドステップ、2m以上ならクロスステップ、なんていう使い分けをショットのたびに判断するよりは、一つのステップ(クロスステップ)を完璧に習得して、どんな場面にも対応できるようにすることが上達への近道です。
 
 しかも、クロスステップの場合、1歩、2歩と下がったところから「し」の字を描きながら横に移動するのもスムーズにできます。
 
 サイドステップのまま横方向に移行させると、下半身が前方を向くことになりますから、それにつられて上半身も前を向きがちになり、下がり始めに体を反転させた意味がなくなります。
 
 かといってサイドステップからクロスステップに切り替えるような複雑な判断をするぐらいなら、最初からクロスステップにしましょうよ、っていうことです。
 
 しかもこの「1歩小さく左足で踏み出す」というのにはちょっとコツがあります。
 
 その1歩目では、重心は前に移動させないのです
 
 僕の感覚では、左足を踏み出した瞬間、これもまた右足のひざの力をフッと抜いて、体を一瞬沈み込ませる。
 
 後ろに倒れ込んでしまうような状態を一瞬作り上げることで、スムーズに後ろ方向への移動ができるんです。
 
 僕の場合は、左足を踏み出した瞬間、おしりを少し突き出す感じです。
 
 しかも、このとき、右ヒザはあえて右方向に開かない。
 
 左つま先だけが右を向くことで、少し内股のような状態になるのですが、そうすることで、左足が大きくねじれて、大臀筋などの大きな筋肉も活用した伸張反射が生まれます。
 
 その力を使って、骨盤を回し、体のターン→テイクバックにつなげることができるのです。
 
 これは、ちょっと練習をすると、すぐにできるようになります。
 
「フットワークの原理 その2」でもお話した「ボールから一旦離れるように下がる」というのと合わせて練習してみてください。
 
 球出し練習の仕方ですが、プレイヤーがコートの中に入り、球出しがロブを出す、というのは共通として、正面から出すだけでなく、コートの角から、中央に立っているプレイヤーに向かってロブを出す、というのもしてください。
 
 今回の「1歩小さく左足を踏み出す」という方法は、右利きのフォアの場合なので、右利きのバックならもちろん逆で「1歩小さく右足を踏み出す」ということになります。
 
 つまり、一番はじめに「フォアかバックか」を瞬時に判断しなければ、下がる技術はままならないわけです
 
 正面からの球出しだと、どうしても、フォアかバックか得意な方に回り込んでしまいます。
 
 コートの角から、プレイヤーに向かって球出しをすると、自分の好き嫌いではなく、状況に応じた判断をする必要が出てくるので、そちらのほうが少し高度な練習になるかと思います。
 
【次回へ続く】