まずは、横への移動を考えていきましょう。
横移動の第1歩には大原則があります。
それは「外側の足から主動させる」です。
つまり、右側に移動したときには右足から、左に移動したいときには左足から動かす、ということです。
この1歩は、それほど大きなものでなくてかまいません。
その場で、踏み換える、という程度で大丈夫です。
ただ、フットワークができない人は、これができない。
たとえば右に行くときに、いきなり左足を浮かせてクロスステップから1歩目を踏もうとしてしまうのです。
この場合、左足が先に宙に浮いて、右足の小指側で体を支える形になるので、1歩目がかなり遅くなってしまう。
これではダメです。
まずは右方向に重心を移動させるため、右足を踏み込む(踏み換える)ことを優先させるんです。
さらに、1歩目として右足を踏み込む(踏み換える)と、人間の体の構造上、左手を前に振り出すことになる。
普通に歩くとき、右足が出れば、左手が出ますからね。
これができることで、体の反転──テイクバックの始動も1歩目から行えるのです。
ポイントは「重心移動を最優先にする」ということです。
僕の場合は「ヒザを抜く」という感覚で行っています。
これも古武術の動きになるのですが、右足だけを「ひざカックン」されたみたいにフッと力を抜き、体が倒れ込むタイミングと合わせて、左足裏の拇指球で地面を蹴って、右足を一歩、踏み込むのです。
それができない人は、右方向に体重を乗せるようにして右膝を曲げ、重心を移動させるだけでもかまいません。
これだと実際には右側への一歩は横には出ませんが「重心移動を最優先する」ことが本来の目的なので、それで良いのです。
このとき、右つま先が外側にしっかりと向けるように踏み直していることが分かるので、ただただ左足を引きつけるのとは違うことが分かります。
最初は、逆足の左足を小さく外側に踏み込み、その反動で右足を大きく右側に踏み出すのがやりやすい。
一歩余分に動く感じになりますが、体の動きとしてはすごく自然にできますし、拇指球で踏み込み、伸張反射も利用できますので、スピードは上げやすいと思います。
そして、2歩目からはすぐにクロスステップです。
すぐに左足を前方からクロスステップにすることで、テイクバックもスムーズに行えますし、2歩目3歩目も速くなる。
ボールが近いときには、サイドステップでもかまわないかもしれません。
プロの多くは、オープン・スペースにすぐに走り始めると、逆を疲れてしまうので、サイドステップを入れてから、動き始めることが多い。
が、そうすると「近いときはサイドステップ、遠いときはクロスステップ」などという切り替えが必要となり、初級者にはかえって難しくなります。
ボールに追いつけない人の大半は、ボールが近くても遠くても、サイドステップでやってしまっている人です。
最初は、少しでも横移動が必要ならばクロスステップ、という癖がつくように徹底して練習する必要があると思います。
サイドステップの場合、下半身は前方を向いてしまうわけで、移動しながらテイクバックをしようとすれば、上半身をねじった状態で移動することになる。
オープンスタンスでの上体のねじりは、テイクバックが完了した瞬間と同調させて軸足を踏み込むことで、強い伸張反射が生まれます。
ですから、ほとんど動かなくても良いところのボールに、サイドステップ1回で移動し、それに合わせてテイクバックが完了するなら、それでもOK。
タイミングが合いやすく、その瞬間だけひねる感じにできるからです。
しかし、2歩も3歩も、上半身をねじったままサイドステップで移動すれば、余分な力が入ったまま、テイクバックをすることになってしまいます。
移動も遅くなり、さらに伸張反射も生かせない。
逆にサイドステップで下半身が前方を向くのにあわせて上半身も前方を向いたまま移動すると、必然的にテイクバックが遅くなるわけで、速いショットには移動もテイクバックも間に合わない、っていうことにもなり得てしまう。
百害あって一利無し、というふうに思うのです。
【次回へ続く】