さて最後に、蛇足ではありますが、最近片手バックハンドをやっている方々、またこれから片手バックハンドをやろうとしている方々に、1つご提案を。
それは、オープンスタンスでの片手バックハンドの習得、です。
昔から片手バックハンドをやっているプレイヤーの中には、できる方も多いと思います。
片手バックハンドのセオリーは、スクエアスタンス~クローズドスタンスです。
テイクバックの段階で、右利きで言えば右肩をバック側(左側)に回さなければならないわけですから、当たり前ですね。
ですから、下半身は正面を向きながら、上半身だけを大きくひねらなければならないオープンスタンスは、もちろん難しい。
テイクバックの際、しっかりと上体をひねる意識が必要です。
右利きの場合、片手バックハンドのオープンスタンスでは左足が軸になるのですが、テイクバックの際しっかりと左ヒザを曲げ(実際には股関節を広げ)、骨盤が回りやすくしなければ、上体をひねられません。
またスウィングでは、普段よりもカラダを開かない意識が強く必要になります。
オープンスタンスで上体をひねると強い伸張反射が生じますので、どうしても上体が開きやすくなります。
右肩をしっかりと残すイメージが、普段よりも強く必要です。
テイクバックの瞬間にはオープンスタンスでも、スウィングに合わせて右足を踏み出し、ひねりによる伸張反射を「逃がす」ようなスタンスの使い方も必要となります。
つまりは、難しいのですが(笑)、それでも可能です。
完全なオープンスタンスは無理としても、セミオープンならば充分可能なのです。
そして、この打法を習得する利点はかなり大きい。
まず、サーブ・リターンなどクローズドスタンスに踏み込む余裕がないとき、それでもトップスピンショットを打つことができます。
また、前回の質問とも絡むのですが、この打ち方をマスターすると、カラダの開きを抑えた打ち方をマスターしたことになるため、クローズドスタンスでのストレート方向へのショットも打ちやすくなる、という副作用もあります。
そして、これは思いっきり応用なのですが、ジャンプショットを打てることが大きなメリットにもなります。
たとえば、こんな感じ(3:40~のショット)
もちろん、フェデラーのようにキレイに打つことは難しいですが(笑)、相手ショットが高く弾むのが分かるけれど、後ろに下がりきれなかった、っていうときに結構使えます。
クローズドスタンスの踏み込み足でジャンプすると、股関節が伸びてしまい、腰の回転がなくなってしまいます。
股関節をたたむ、ということができなくなるからです。
クローズドスタンスに踏み換えている時間をロスする分、デメリットのほうが大きいことになります。
一方、オープンスタンスでは、後ろの軸足の蹴り上げを骨盤の回転に活用でき、上体との伸張反射をうまく制御できれば、ある程度強いショットを打つことも可能なのです。
ジャンプはしないまでも、下がりきれないときに後ろ体重のまま打つことはできますしね。
また、これも。(同じ動画の1:43~のショット)
このショットは、カラダが沈み込んだ瞬間、オープンスタンスになっているのがお分かりでしょうか。
フォアハンドで言えば、オープンスタンスで一瞬沈み込んで、前足(左足)でジャンプした後に右足を後ろに蹴り下ろしながら打つ、ジャックナイフ(エアK)と同じ原理です。
動画ではフォワードスウィング~インパクトに向けて、左足を蹴り下ろしているのが分かると思います。
これも結局は、後ろ足(左足)で蹴り上げながらスウィングするというオープンスタンスと同じ原理の動きを、空中でやっているだけ、ということですね。
これだけ応用が利くようにするにはかなり練習は必要ですが、これなんかは、短くて高いバウンドのショットを叩くことができるのですごく便利になります。
片手バックハンドのオープンスタンスは、僕自身は、高校時代、ボリス・ベッカーの真似をしていてやるようになりました。
その後、サンプラスもよく使っていましたし、動画のように、フェデラーもたびたび使います。
一部の技術本やサイトでは、片手バックハンドはオープンスタンスでは打てない、と書いてありますが、それは違います。
難しいだけです。
また、それと連動して、片手バックハンドでは運動連鎖を使っていない、と思っている人もいますが、それは大きな間違いです。
腰の回転幅が小さく、大きな伸張反射も生じにくいためにそのように感じるかも知れませんが、それは運動神経がなさ過ぎます。
そういう人に限って、いまだに三度笠フォロースルーだったりしますから、見てみてください(笑)。
おそらく、外旋+回内を活用しバックハンドでのウィナーを、試合で決めた経験が少ない人だと思います(笑)。
片手バックハンドは、現代テニスでは圧倒的な少数派です。
それはやはり、圧倒的なデメリットが歴然と存在するからです。
ただそれでも僕は、片手バックハンドを続けると思います。
理由は簡単。
カッコいいからです(笑)。
絶滅危惧種にならないように、若手のプロでどんどん片手バックハンドの選手が出てくれることを祈りましょう。