試合中によく陥るのが「分析麻痺」という状態です。
自分のミスなどを分析することはすごく大切なのですが、それにこだわりすぎて、いつまでたっても「内的」な注意集中から抜け出せない状態を言います。
本人としては、周りの状態が気になっていないので「集中」をしているつもりになれるのですが(笑)、いざボールが来たときにも、意識が「内的」な状態のため、的確な状況判断や選択ができず、再びミスを繰り返すことになります。
以前にも言った「ミスをするたびに素振りを繰り返すプレイヤー」が陥りやすい状態です。
自分のミスのポイントが分かっているプレイヤーならばいいのですが、
「今のはどうしてミスをしたんだろう?」
などと「探る」状態になってしまうともうダメです。
自分のプレイやショット自体の「良し悪し」を考え始めるのもダメ。
「俺って下手だなぁ」
とか、
「調子悪いなぁ」
などという思考は最悪です。
「次はこう打ってみよう」
という客観的な分析だけで終わらないといけません。
そのためには、実は、普段の練習が不可欠です。
普段の練習では、徹底的に「内的」な思考を繰り返すことを行います。
上手くいったときの条件やミスの原因を、自分の体と向き合い、徹底的にあぶり出すのです。
特に、同じミスを繰り返すような場合、その原因も同じものであることがほとんどです。
これを、コーチやチームメイトなどに指摘してもらいましょう。
自分で分かるのならばいいのですが、たいていの初・中級者は、ミスの原因を間違って認識しています(笑)。
以前にも言いましたが、フットワークが悪く、または遅く、良い打点で打てるところに移動さえしていないのに、ミスをしたあと、スウィングのチェックをするプレイヤー、皆さんの周りでもいるでしょ?
「そのスウィングで打てるような状況をまず作れよ!」
みたいな(笑)。
あれです、あれ。
みなさんも、似たり寄ったりのことを、どこかでしてきたはずです(笑)。
たいていの初・中級者は「自分で修正可能な範囲の原因」または「修正が楽な原因」しか思いつかないのです。
その根本にあるのは、
「調子が良ければ打てるのに」
という自負、というか傲慢、というか妄想です(笑)。
だからこそ、練習のときにはしっかりと自分のミスと向き合ってください。
初・中級者の練習や試合でやってしまうミスに、それほど多種多様なパターンがあるわけではありません。
たいてい同じような状況で、同じようなショットを、同じようにミスをする。
だからこそ、その原因を練習のときからあぶり出しておけば、試合中の分析も簡単に済みます。
また、
「調子が良ければ打てるのに」
という考えがある人ほど、分析麻痺に陥りやすいのは、普段の練習のミスを、スルーしてしまっているからです。
絶対に、練習でも一定の確率でミスをしているはずなのに、成功例のほうがわずかに確率が高いだけで「練習の時にはミスしない」というふうに都合良く自分の記憶が塗り替えられているのです。
自分が良いショットを打つ確率と悪いショットを打つ確率の比率が、頭の中で都合良く変換されてしまう人は、意外に多いのです。
これはもう、データを取りまくったり、周りに辛口気味の評価をしてもらうようなショック療法でしか治りません。
「褒めて育てる」という指導は、伸び盛りのジュニアや初心者にはすごく重要ですが、もともとメンタリティーの弱い日本人が、大人になってまで「褒められないとやる気が出ない」という甘いことを言っているようでは、プレッシャーのかかる試合で勝てるわけがない(笑)。
もし、他人にミスを指摘されたくないほどにメンタリティーの弱い人は(笑)、自分で探すしかありません。
プレイ自体を自動化することと同時に、ミスを修正するところまでも自動化できれば理想的。
「ミスを忘れて、次に切り替える」
ということを簡単に言う人がいますが、みなさん、できます?(笑)
それができたら苦労しねぇよ!って思いません?(笑)。
それよりは、ミスを元に次への方策を考える、というほうが、普段の練習からも取り組みやすく現実的なのです。
忘れるのではなく、参考にするのです。
メンタルトレーニング上のことを言えば、夜寝るときに、今日1日のことを思い起こすのではなく、明日以降のワクワクできることを思い浮かべながら寝る、というのが有効です。
「1日を振り返って、自分を褒めてあげる」
って書いてある自己啓発本もよくありますが、今回は無視してください。
毎日毎日自分を褒めてあげられるメンタリティーを持っている人が、テニスのメンタルで困ることはないんだから(笑)。
次の日のワクワクを、1つでも2つでも成功してはじめて、自分を褒められるようになるのが、人間の本質です。
そしてそれはプレイも一緒。
「次はこれをしてみよう」
とチャレンジをして成功すればそれを続ける。
失敗すれば次のチャレンジを試す。
サイコロで狙った目がでなければ残念ですけれど、
「ああやって投げれば良かった」
なんて思わないでしょ?(笑)。
自分が自分を、そして相手やボールを、しいては試合の行方さえも支配できるなどと考えているから「欲」が出るのです。
「こうすれば良かった」
などと、どうせできなかったことを、さも「調子が良ければできたのに」という言い訳とともに思い浮かべてしまうのです。
自分が制御できるのは「緊張でガチガチの自分の体」のごく一部なのだ、という現実感をまずは持ってください。
そして、それでも勝とうと必死になってください。
「勝つことだけ」を考えるのです。
格好をつけるのでもなく、「負けてもいい」などと斜に構えたり、妥協点を探すのでもなく。
まずは、そこがスタートラインなのです。
【次回へ続く】