ひさしぶりに、メンタルについてのお話を(笑)。
高体連主催の試合の場合、団体戦では、監督または登録選手がベンチに入ることが認められています。
ある団体戦で、僕はダブルスのベンチに入っていました。
本来、テニスの試合では、1ゲーム終了後のエンドチェンジにおいては休憩が無いのですが、高校での団体戦では、コーチングが認められています。
1ゲーム目が終わり、気になった点があったので、それを伝えようと思って立ち上がった僕は、Aさんに対して、前衛でのポジショニングについて若干の修正を伝えました。
ただ、それはパートナーであるBさんのポジショニングにも関わることだったので、そのあとにBさんにも一言言わなければならなかったのですが、Bさんは水分を取ると1人でコートに戻っていこうとしていたのです(笑)。
僕はAさんと
「いまたぶん、Bさん、テンパってるぞ」
と話していると、そこでようやく、自分一人だけがコートに立っていることにハッとなるBさん。
笑っている僕やAさんに気づき、照れ笑いを浮かべながらベンチに戻ってきました。
聞くと、予想通り、かなり緊張していたようで(笑)。
ただ、そのおかげでBさんの緊張も解け、その試合は勝つことができました。
よく勘違いをする人が多いのですが、よくトップアスリートが、
「周りの音が聞こえなかった」
というのを言っているため、それこそが「集中している証拠」だと思っている人が多い。
しかし、先ほどのBさんのように「集中していること」と「周りが見えなくなっていること」とは、本人にはなかなか区別がつかないことがあるのです。
これも、ある試合の時。
それは個人戦だったため、僕たちはフェンス越しの観戦になっていたのですが、Cさんの対戦相手はジュニア出身のトップ選手。
実力差は大きく、いい試合にはなっているのですが、なかなかゲームを取りきれない場面が続きました。
他の選手たちと応援をしていたのですが、Cさんは緊張と負けている現実に「周りが見えていない」状態に陥っていました。
ゲーム差が少し開き始め、1-4ぐらいになったときでしょうか。
僕は対戦相手がエンドチェンジでコートに向かうときの仕草を見て、
「相手の選手、余裕出して調子に乗って、遊び始めるぞ」
と、他の選手たちに予言したところ、ドンピシャで、相手選手のプレイが荒くなり(笑)、雑なプレイが何回か続きました。
生徒には、
「なんで分かったんですか?」
と聞かれたのですが、それはもう相手選手の仕草を見て、としか答えられない(笑)。
ただ、たぶん、相手選手の表情やエンドチェンジの時の動きをちゃんと見ていれば、分かったはずなのです。
そしてさらに、その後の雑なプレイを見れば、確信できたはず。
そこは、相手の雑なプレイに「つけ込む」隙であったはずなのですが、残念なことに、Cさんは全く気づいてない。
個人戦でのコーチングは禁止ですから、教えてあげることもできない。
結局、そのゲームを取ることはできたのですが、Cさんが挽回した、というよりは、対戦相手が勝手に「遊んで」ゲームを落とした、という感じにしかならず、対戦相手もゲームを落としたことで反省したのか、次のゲームからは再び容赦なく、丁寧なショットを打つように戻ってしまっていました。
あそこで、Cさんが対戦相手の「変化」に気づき、それにつけ込んだ形でゲームを取っていたら、試合の流れは分からなかったと思うのですが。
実は、試合の中では、周りを見たり、周りの音を聞いたり、周りの雰囲気を感じることが、すごく重要なときがあるのです。
つまり、本当の意味での集中とは、自分の殻に閉じこもることではありません。
「的確なものに注意を向けること」こそが集中なのです。
それには「広い」範囲と「狭い」範囲、「外的」なものと「内的」なもの、の組み合わせによって次々と変わっていくものです。
ボールに集中しなければならないのに、味方の講演が気になっていてはダメですし、風向きを肌で感じなければならないのに、直前のプレイの反省をしていても、次にはつながらないのです。
この「的確な集中」について、また次回お話ししましょう。
【次回へ続く】