Kaorin_wll_be さんから、久しぶりにメールをいただきました。
今回、久しぶりにメールで送ってこられたのは、この質問についてでです。
「上手く答えられなくて」僕に内容の確認を聞いてこられたのですが、回答の追加返信でkaorin_will_be さんが答えられている内容で、ほぼ合っていると思います。
質問に直接答えるように勧められたのですが、知恵袋ではスペースも足りませんし、質問の答えとしては、kaorin…さんの答え方で十分だと思いますので、ここでは、その内容をもう少し細かく検討することにしようと思います。
今回はストロークを中心に考察をすることにします。
まず確認しておかなければいけないことがあります。
ストロークにおけるヒザを「曲げる」という行為は、テイクバックの瞬間には必須です。
ただ、テイクバック → フォワードスウィング → インパクト → フォロースルー という動きを経るなかで、曲げたところから伸ばされることも非常に多い、ということです。
これは、Yahoo!知恵袋の質問でもお答えしたとおりですので、ご覧ください。
ですから、今回で言う「ヒザを曲げる」というのは、あくまでも「準備段階としてのヒザの曲げ」を中心にお話しし、そのうえで、ヒザを曲げ続けることと伸ばすことの違いを考察することにしましょう。
今回もすべて右利きのフォアハンドを元にした説明になると思ってください。
まず「ヒザを曲げる理由」は、kaorin_will_beさんもおっしゃっているように、骨盤を回すためです。
ただ、スタンスによってその「原動力」は異なります。
これは「ストロークによるスタンスの使い分け」シリーズでもご紹介しましたね。
基本的なスクエア・スタンスの場合、骨盤を回すのは右足の「蹴り出し」によって、右腰を前方に押しだすことが原動力になります。
この際「股関節のたたみ」によって左腰をずらすんだ、ということは先日お話ししました。
右足を「蹴り出す」わけですから、最初からヒザが伸びていては無理ですね。
このときの「曲げる大きさ」が問題になりますが、これは難しい。
曲げた右足の伸展を利用して骨盤を「蹴り出し」、骨盤を回転するのですが、あまり曲げすぎると、その後の蹴り出しが弱くなってしまうからです。
足が伸びて勢いがつく前に、骨盤が回り終わってしまう、というか。
加速がつきにくいわけです。
逆に、最初からヒザが伸びていると、当たり前ですが蹴り出せるものも蹴り出せない。
これは自分なりの「ちょうどいい角度」を見つけなければならないと思います。
これが、ただただ「ショットを安定させる」とかを理由にして、曲げることばかりを優先させたフォーム指導をしてしまうと、この「適度な曲げの角度」をつかみにくくなってしまうので注意しましょう。
「曲げてから蹴り出す」ということを頭に入れながら、練習をすることが重要だと思います。
また、左足のヒザについては、ボールの高さによります。
ボールが低いのにヒザが伸びていると打てませんし、その逆もまた同じです。
左足が最初から突っ張ったようにヒザが伸びていると「股関節のたたみ」もできませんから、kaorin_will_beさんのおっしゃるとおり、最初は適度に曲がっている必要があるでしょう。
それでは、オープン・スタンスはどうでしょうか。
オープンスタンスは、テイクバックのときの、大腿部と骨盤との内旋+大臀筋による伸張反射を活用した「蹴り上げ」によって骨盤を回転させる打ち方です。
このテイクバックでの伸張反射そのものが、ヒザを曲げて股関節を曲げなければ生じません。
ヒザが伸びっぱなしでは、強い伸張反射が生じないのです。
下半身の筋力を利用できないストロークですと、どうしても上半身に力みが入ることになりますので、そういう意味で安定感はなくなります。
ヒザの適度な柔らかさが、上半身の適度な脱力にもつながる、ということです。
オープン・スタンスの場合にも、ヒザを曲げすぎてはかえって伸張反射が生じにくくなるため、曲げる角度はその人その人によって違います。
曲げれば良いってものではありません。
また、サーブのときのヒザの曲げについては「サーブの原理 その33」に書いてありますので、ぜひお読みください。
これもやはり、体のひねりがポイントになっています。
さらに、ストロークのスライスはラケットを上から下に振り下ろすスウィングです。
今後、ボレーの技術論でもお話ししようともいますが、上から下へラケットを振り下ろすし、さらに手のひらを上に向ける動作では、筋肉の構造上、脇を締めることでしっかりと力を入れることができます。
つまり、スライスのスウィングでラケットを前に振り出すためには、体の回転を強くする必要がない。
したがって、伸張反射によって体を回転させる(回転してしまう)オープンスタンスは、スライスにはそぐいません。
右足によって「蹴り上げ」ながら打つオープン・スタンスは、ラケットを振り下ろす動きと相反してしまうために、意味がないことも大きい。
それに対してスクエア・スタンスは、基本的に随意運動が原動力なので、骨盤の動きや上半身の回転を調節しやすいく、またヒザを曲げながら打ちやすいので、スライス・ショットが打ちやすいわけですね。
この「ヒザの曲げ」に関する指導は、非常に難しい。
「曲げろ」というのは簡単なのですが、前述したとおり、その後のヒザの伸展を含めた足の動きと骨盤の回転、スタンスなどを総合的に見ながら行わなければならないからです。
また、スキーやスノーボードをやったことがある人は経験があると思いますが、本人はすごくヒザを曲げているつもりでも、周りから見ていると全然曲がっていない、ということがよくあります。
客観的なビデオなどを見なければ分からないことが多い。
かといって、先ほどからも言っているとおり、「力が入る角度」「伸張反射が生じている角度」というのは人によって違い、他人がとやかく言えないときもある。
ですから、プレイヤー自身が「体を回転させるためヒザを曲げる」ということをしっかりと理解した上で、コーチがスウィングの動きを総合的に診断し、さらに実際のショットの質を確認しながら、アドバイスを送ることが必要になります。
ましてや、プロのフォームだけをまねてもしかたがない、ということになるわけです。
まあ「フラットサービスなら膝の屈伸は邪魔になりますよ」なんていうトンデモ理論を、その場の思いつきで平気で知恵袋に書いてしまう人や、自分のテニス理論を論理的に説明するっていうことができない人には理解できないと思いますが(笑)。
kaorin_will_beさんには、以上のような内容を送らせていただきましたところ、ブログへの掲載もお願いされましたので、載せておこうと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
ご自由にお使いください(笑)。