前回、ジャンプサーブの場合には、左足着地のほうが理にかなっているんだ、ということをお話ししました。
 
 これが、左足をつけたままのサーブの時には違います。
 
 左足がストッパーとなり、反作用が軽減されるからです。
 
 左足をつけたままのサーブの場合、多くは右足は「蹴り上げ」るのではなく「蹴り出し」ていることがほとんどで(ジャンプしないぐらいですから)、右腰椎の前方向への移動が強いことも原因の一つだと思います。
 
 もともと左足をつけたままのフォームで長年サーブを習得していた人が、途中からジャンプサーブに切り替えると、右足着地のフォームになりやすいのは、このためです。
 
 ウッドラケット時代の人に、右足着地の人が多いのは、初心者のときに、重いウッドラケットではジャンプサーブができず、左足をつけたフォームでしかサーブが習得できなかったことも大きいと思います。
 
 現在でも、非力なジュニアにサーブを教えるときには注意してください。
 
 子供の頃から、やたらとジャンプするサーブを覚えるとフォームが汚くなる反面、右足を送り出すようなフォームで習得すると、右足着地になりやすいですからね。
 
 また、腰の回転量を大きくしようとして右足を意識的に出しているプレイヤーもいます。
 
 が(今度上半身の使い方のところで詳しく説明しますが)、トロフィーポーズで後ろにねじった上体を急速に戻すことで、肩のラインを回転させて腰の回転を追い抜くように右腕を振り出すときは、右肩から左腰にかけてのたすき掛けのように連なる筋肉群を収縮させることで、肩甲骨ごと、腕を前方に振り出すイメージで腕を振り、上腕が後ろに置いていかれるのを防ぎます。
 
 これがないと、フォロースルーがいつまでたっても体の横、ってことになりますから。
 
 だから、上腕をゼロポジションを維持したまま、肩甲骨ごと前方にスライドさせようとすると、たすき掛けのように連なった筋肉の収縮で土台となる左腰が前に引き出され、これが左足を前に出す原動力となります
 
 さっき言った、反作用です。
 
 腰の回転を意識しすぎるあまり、その腰からさらに肩のラインを「らせん状」に先行させる上半身の最も強力な大胸筋や腹斜筋を使えてない、というのであれば、本末転倒ですからね。
 
 また、トロフィー・ポーズの「ヒップファースト」のとき、左足の付け根の小臀筋、中臀筋、大腿筋膜張筋を伸ばすことで生じる伸張反射で、左腰椎を引き寄せて回転させるんだ、というのはお話ししましたよね。
 
 この小臀筋、中臀筋、大腿筋膜張筋は、左足の回旋に関わるだけで無く、左足の「外転」にも関わります。
 
「外転」とは、足を横方向に広げる運動のこと。
 
 これも、左足が地面についているときには、左足を中心として、骨盤のほうが引き寄せられます。
 
 サーブ方向の45°に向いている左足の方向に骨盤が傾き、体軸を傾けることに役立つために、右上腕のゼロポジションを維持しながら、ラケットを高く上げるためには重要な動きです。
 
 右足の「蹴り上げ」を助ける働きもあります。
 
 その一方で、左足が地面から離れると、骨盤の慣性のほうが大きく、左足のほうが引っ張られて、まさに「外転」することになる。
 
 それが、左足を前方に踏み出す始動動作にもなります。
 
 骨盤が回転によって徐々に前方に向いてくると、どこかで骨盤の向きとヒザの向きが同じになる瞬間が出てきます。
 
 その瞬間、大腿直筋に力が入って収縮が大きくなり、股関節を屈曲する方向に働くことで、上体を大きく倒しこむサーブになりますし、左足も前に出やすい。
 
 どちらにしろ、左足着地を自然に行える理由はあっても、右足着地をする理由にはなかなか合理的なものはない、ということになります。
 
 これもまた、いつも言っている「天秤」でしかありませんが(笑)。
 
【次回へ続く】