今回は、サーブの後の「右足着地」について。
 
 左足を浮かさないタイプの場合は仕方ないとして(左足が前に行かないんだから、右足も出さずに前のめりに倒れるわけにいかないですもんね)、サーブのインパクトの際にジャンプした後、右足が左足を追い越して右足で着地することです。
 
 本来であれば、フォロースルーのところでお話しするべきなのでしょうが、前回までの体重移動+腰の回転というものと深く関わりますので、説明をしてしまいます。
 
 結論から先に言えば、右足着地は極力避けた方が良いと思います。
 
 現在すでに右足着地のフォームになってしまっている場合は、右足着地だけをなおしてもスウィングバランスが崩れるだけですので、「修正した方が良い」とまではいいませんが、今からテニスをやろうとする人、また今から体が成長するジュニアなどは、右足着地はさけたほうが良いと思うのです。
 
 かつては、右足着地の選手が結構いました。
 
 代表例は、現在ジョコビッチのコーチとなっている、ボリス・ベッカー。
 
 セミ・オープンのようなスタンスから、厚く握ったラケットでサーブを打ち落とし、しかも右足着地、という変則的なフォーム。
 
 でありながら、ビッグサーバーの代表として、一時代を築きました。
 
 錦織くんのコーチとなっているマイケル・チャンも、右足着地でした。
 
 アンドレ・アガシなんかは、プロデビュー当時は右足着地だったのですが、サーブの弱さを攻められるようになってから、フォームを改造して、左足着地に変更した選手の一人です。
 
 現在、トッププロで右足着地をしている選手はほとんど見かけなくなりました
 
 ちょっと変わっているのが、今年の全豪オープン3回戦でフェデラーと対戦したガバシュビリ。
 
 ファーストなどでフラット系のサーブを打つときには左足着地なのに、セカンドやファーストでもセンターを狙ったトップスピンのときには、右足着地になる、という器用な選手です。
 
 なぜ、ガバシュビリがそういうふうなフォームになってしまうのかを考えていくと、自然と、右足着地についての考察が深まるとも思いますので、後々紹介しましょう。
 

 
 さて、まず、シンプルに考えましょう。
 
 みなさん、普段歩くとき、右手が出たら、左足が出るでしょ?
 
 だから、フォロースルーで右手が前に出ているときに着地した場合には、左足が出ている方が自然な体の動きなんです。
 
 そこで右足が出てくると言うことは、どこかで無理な筋肉を使っている、ということです。
 
 上半身のひねりは、骨盤を土台にして行われます。
 
 ロボットのように、骨盤の方向と上半身の方向が一緒に動くわけではなく、骨盤と上半身を斜めにつなぐ腹筋群・背筋群を収縮させることによって、上半身をまさに「ひねる」わけです。
 
 ですから、上半身を左方向にひねれば、その反作用で骨盤が右方向にひっぱられていることになる。
 
 実際の運動ではその反作用の力を、足の踏ん張りなどで抑えているだけ。
 
 歩行は、その反作用を逆に利用し、右肩が出ればスムーズに左腰椎が前に出る、という連鎖運動になっているんです。
 
 サーブも同じ。
 
 地面に足がついているときは良いのですが、足の蹴り上げによってジャンプをすると、スウィングの前半こそ、蹴り上げの勢いで回転し続ける腰椎の動きに、上半身がついてくる形になりますが、インパクト後は、さらに回転をしようとする上半身の反作用で、腰椎は逆方向にひっぱられることになります。
 
 だから、わずかでもジャンプをする人にとっては、左足着地の方が理にかなっているんです。
 
【次回へ続く】