次に、下の図53、54を見てください。
 
 黄色丸がグリップ位置、赤丸がヒジの位置、オレンジのラインは前腕の方向です。
 
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 おわかりでしょうか?
 
 実は、グリップの高さはほとんど変わっていない
 
 ラケットを「立てる」とき、動き自体はヒジを中心にラケットを持ち上げているのですが、実際には、体のひねりと反りによって、グリップを中心にして、前腕が下に回り込み、それに対称的な動きとして、ラケットが引き上げられる、ということになるんです。
 
 ヒジを中心としてラケットを持ち上げると、その重さがテコの原理でヒジにのしかかってきますが、この持ち上げ方なら、ほとんどヒジに負担がかかりません。
 
 大事なのは、上腕のゼロポジションを絶対に崩さないこと(図55)。
 
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 上体が起き上がったまま同じことをすると、ゼロポジションよりもヒジが下がってしまいます
 
 よく、
 
「サーブはヒジが下がってはいけない」
 
 と言われますが、それはあくまでもゼロポジションを基準に話をしないといけません。
 
 図のような状態を「肘が下がっている」と、本気で指摘するコーチも世の中にはいますからね。
 
 よく「ヒジが落ちる」という表現をよくしますが、これは「ゼロポジションよりも下がっている」ということであって、単純に「肩の位置よりヒジの位置が低い」ということでないので注意してください。
 
 別の言い方で言えば「脇が締まっている」ということになるでしょうか。
 
 ただ、実際に「ヒジが落ちる」フォームで打ってしまっている人は非常に多くいます。
 
 皆さんの中にもいませんか?
 
 コーチなどに、ヒジを上げるように指摘されている方。
 
 プロのやっているフォームをイメージして、体を傾けているつもりなのに、実際には上体が棒立ち上体で体が傾いていない人になりやすく、ただ単に、
 
「ヒジを上げろ」
 
 と言ってもなかなか修正できないことが多い。
 
 ヒジを中途半端に上げようとすると、ますます上体が起き上がってしまうからです。
 
 ヒジを上げさせるイメージと同時に、上体が棒立ちにならないよう、体をしっかり反らして傾けることを意識させないと「ヒジが落ちる」ことが治らないことが多いので、注意してください。
 

 
 この、ラケットを水平方向から垂直方向に「立てる」動きが、重いウッドラケットでは非常に難しかったんです。
 
 上腕二頭筋を使って肘を曲げるエバート・タイプの場合、筋力もあり体も柔軟なプロならばそれほどでもありませんが、アマチュアがやると、確実にラケットはヒジを中心とした弧を描くことになる
 
 昔は、この動きをもって、
 
「ラケットは、ぐるりと円を描くように動かそう」
 
 って言ってたんですが、今、本当にそれを目指すと、古くさいと思われますから注意してください(笑)。
 
 ラケットの動きを途切れさせないために、円運動をしている「イメージ」でラケットを動かすことは良いのですが、本当に外観的に円運動をしているラケットワークは、現代では無駄な動きでしかありません。
 
 良い意味での「イメージと現実とのギャップ」なら良いのですがね。
 
 で、先ほども言ったように、上体の「反らし」や「傾き」、「ひねり」が全くないまま、図53、54のようにグリップから下に前腕をぐりこませると、ヒジが下がるフォームになってしまいます。
 
 で、コーチから、
 
「ヒジを上げろ」
 
 って言われてただただ直すと、上腕二頭筋を使いヒジを中心として持ち上げる、っていうことになってしまうので注意してください。
 
 自分の「イメージ」とラケットの「軌道」の違いを今一度、動画を撮影するなどして確認くださいね。
 

 
 そして、もう1つ。
 
 この、ラケットを上げて、トロフィー・ポーズになった瞬間、ラケットを持った腕の動きが一瞬止まったように見えます
 
 まあ、実際には動いているのですが、少なくとも、ラケットを最も立てたとき、ラケットの動きは最も遅くなる
 
 これをもって、
 
動きが止まっているから、『スムーズな』動きではない
 
 などと言ってしまう人がいますが、それは大きな間違いです。
 
 前回にもお話ししたとおり、ラケットを引き上げる力は、ちゃんとしたフォームであれば、伸張反射を利用しています。
 
 そして、その伸張反射が生じるのは、前腕が水平近くになってラケットを引き上げる本当に最初だけ
 
 メトロノームがあれば用意していただいて見て欲しいのですが、メトロノームの針は一番倒れたところで、バネの力で針が上方向に押し返されて立ち上がるのですが、立ち上がるにつれて、動きは遅くなります。
 
 それは、最初だけバネで力を加えるだけで、立ち上がるまでは力が加わらず、重力で徐々に減速するからです。
 
 今回のラケットの引き上げも同じ。
 
 ラケットを引き上げる開始の一瞬だけ伸張反射によって大きな力を加え、残りはラケットを支える最低限の力を残すのみで、適度に脱力をしているからこそ、ラケットが立ち上がったところで最も速度が遅くなるんです。
 
 そして、そこからまた倒しこむときに、また重力によって速くなる。
 
 だからこそ、トロフィーポーズで「一瞬止まったように見える」ことこそが、適度な脱力をしている証拠なんです。
 
 それを、常にラケットが上がったり下がったりしている中で、一定速度で動いていることのほうが、不自然きわまりない
 
 重力などとは関係なく、常に随意運動でラケットに運動させている、何よりの証拠です。
 
 みなさんも、周りの選手で観察してみてください。
 
 特にエバート・タイプやナブラチロワ・タイプの人で、しかもその原理はちゃんと理解できていない人ほど、ラケットを持ち上げてからラケットダウンまでのラケットの動きが、常に一定か、どんどん加速し続けているかどちらかですから。
 
 そういう人は、常に随意運動で力を加え続けているんです。
 
 ラケットを運動させていることで生じる、慣性の力によって、「脱力している」と勘違いしているだけ。
 
「本当に脱力していたらラケットの速度は変わってもいいんだ」
 
 ということを常に頭に入れながら、自分のテイクバックの大きさ、速さを決めていってください。
 
【次回へ続く】