八大神社のお参りを終えて、長い坂を歩いている間に、ふと思ってしまったのです。
「あ。。。貴船神社いこっかな。。。」
前回もお話ししたとおり、八大神社の最寄り駅は、叡山電鉄の「一乗寺駅」。
貴船神社は、その叡山電鉄の沿線にあることを知っていた僕は、そう思っちゃった。
叡山電鉄の終着駅にある「鞍馬」には行ったことがあるんです。
絵画も映画も好きな僕は、実は、源氏物語も好きでして(笑)。
光源氏が、若紫(のちの紫の上)を見つける場所が、鞍馬寺とその周辺をモデルに書かれたのではないか、と言われているために、鞍馬寺には行ったことがある。
ただ、貴船神社は行ったことがこれまでありませんでした。
紅葉の名所としてよく聞くんだけど、紅葉の季節は、今回のような休みを取れたことが無く、行く機会がなかったんですね。
で、思い立っちゃったわけです。
何回も言いますが、今回の主目的は「必勝祈願」。
貴船神社は、縁結びでは有名ですが、勝負運っていうのは聞いたことがない(笑)。
心願成就、とは言われていますが、それはどこの神社だって同じでしょう?
全てはこの判断が、のちのちの過ちのもとになっていくのですが。。。そのときの僕は、
「いいこと思いついたなぁ」
ぐらいにしか考えてない(笑)
ただ、時間がありません。
もうお昼は優に過ぎています。
ホントは、一乗寺駅までの通りで見つけたカフェの前にあったメニューボードに惹かれていて、そこでお昼ご飯を、と思っていたのですが、貴船神社に行くのであれば急がねば。
後ろ髪引かれる思いでカフェの前を通り過ぎ、駅近くのコンビニで、おにぎりを購入。
電車を待つ間に、お茶で流し込みました。
15分ほどで、鞍馬行きの電車が到着し、すぐに乗車です。
乗車時間は、そう、20分ほどでしょうか?
貴船口駅に降り立ち、いざ、貴船神社へ!と思った瞬間、僕の目の前に、案内の看板の文字が飛び込んできました。
「貴船神社、徒歩30分」
さ、30分!?
往復で1時間もかかるじゃありませんか!
早足で歩いたって、そうは早くならないでしょう、山なんだから。。。
バスもあるようですが、そのバスを15分も20分も待ってたんじゃ、結局同じだし。
さすがに、まだ本来の目的地を回りきっていない僕は、すぐに決断。
「やーーーめた」(笑)。
ここまで、読んだ方で、
「せっかく、そこまで行ったんなら、神社まで行けばいいのに。
もったいない」
と思った方、いませんか?
でも違うんですよ。
経済学の言葉で「サンクコスト効果」というのがありまして。
「サンクコスト」とは、日本語で「埋没費用」とも訳されるモノ。
ある事物・事業に投入した費用のうち、その事物・事業を廃棄、縮小、撤退したとしても回収できなくなった費用または労力は、どうあがいても「返ってこない」と割り切り、その瞬間・瞬間のもっとも良い判断を行うべき、という考え方です。
「そこまでしたのに、途中で止めてしまっては、これまでの投資・努力が無駄になってしまう」
という考えで、本当に有効な選択肢を除外することは、「サンクコスト効果」に陥っている、という言い方をします。
かつての「脱ダム」のときに、経済学を知らないおじいちゃん議員さんたちが、よく言っていた台詞ですね。
バブル期の不良債権を生んだ背景も同じ。
たぶん、世代的にも、同じ人たちが、同じ事を繰り返してきたんだじゃないでしょうか(笑)。
さて、話はずれましたが──つまり、貴船神社に来てしまったことそのものの判断は、もちろん間違いだったわけですが、その間違いを無駄にしないために、わざわざ無理をして貴船神社にいっても、間違いを挽回できることにはならない、ということです。
それよりも、時間を本来の目的のために使ったほうが良い。
そのときの僕は、まさにこの「サンクコスト」の考え方を、ひとり自分の心の中で振り回し、ひとりいい気になっていました。
(経済学を駆使して、行動判断ができるなんて。。。俺って『できる男』みたいじゃないか。。。!)
と。
貴船神社に来てしまったことそのものの判断ミスをしたのも自分自身であることは、すっかり忘れて。。。
そして、その小さな判断ミスが、のちのちの大きなミスにつながっていることにも気付かず。。。
【次回へ続く】