プレイヤーがごちゃごちゃしてしまいますので、今後は、味方前衛、味方後衛、相手前衛、味方後衛を読み分けてください。
 
 それが次の図です。
 
 
 
 まず、味方前衛が立っている範囲は、相手後衛にとって打ってはいけない場所、いわゆる「デッドゾーン」になります。
 
 味方前衛が「一歩で届きそうな範囲」に、相手後衛は、なかなか打ち込めないわけです。
 
 もちろんロブなら抜くことはできますが、それは打った後でも対処が可能。
 
 味方後衛は、この味方前衛が作ってくれた「デッドゾーン」を「捨てる」んです。
 
 良く言えば、味方前衛を信じて、コートの左側を任せる。
 
 悪く言えば、もう、抜かれたら抜かれたで、そんとき対処っていう(笑)
 
 これによって、味方後衛はコート右側半分に集中できることになります。
 
 そして、もう一つ。
 
 実は相手後衛にとっては、そのほかに「実質的なデッドゾーン」が存在します。
 
 それは、パートナーである相手前衛の立ち位置の延長線上、です。
 
 もちろん、相手後衛が、針に糸を通すようなコントロールを持っていたり、パートナーである相手前衛にボールを当てても平気なハートの持ち主であれば関係ないかもしれませんが、そんなことを考慮に入れていたら、ダブルスは守れません。
 
 図で言えば、黄色破線の右側は、「実質的なデッドゾーン」として捨てることになります。
 
 したがって、味方後衛の立ち位置は、この通常の「デッドゾーン」と「実質的なデッドゾーン」の間、いわゆる「オープンスペース」の中央ライン上に立つことになります(図中赤線)。
 
 この「空間認識」がすごく重要なんです。
 
 コーチによっては、
 
「相手後衛が『二人の前衛の真ん中』に見えるように立て」
 
 と教えてらっしゃるコーチもいて、なるほどなぁ、と思いました。
 
 ただ、それですと、のちのち説明する「ストレート・ラリー」での立ち位置との系統的な説明ができなくなってしまうので、僕はちょっと面倒くさいですが、図のような説明を1回1回行います。
 
 すべての基本は、この通常の「デッドゾーン」と「実質的なデッドゾーン」を瞬時に判断すること、です。
 
 通常の「デッドゾーン」は味方前衛の技量や立ち位置が大きく影響しますし、「実質的なデッドゾーン」は、相手後衛の技量と相手前衛の立ち位置に大きく影響されます。
 
 これだけは「やってみないと分からない」ということもあり得るわけです。
 
 しかもそれを見抜くためには、厳密に言えばそれぞれのサーブ、レシーブが入れ替わる4ゲーム分必要になりますので、気づいたときには負けている、ということもある。
 
 ですから、ある程度「どの選手でも通用するような一般化した「基準」が必要になりますし、そのためには一定以上の「経験」も必要となります。
 
 多くの練習に裏打ちされた「野生のカン」というやつがある人は、だからこそ強い。
 
 必要なスキルは「不要なゾーンを『捨てる』」感覚
 
 相手のショットの方向を読むのは非常に難しい技術ですが、
 
「この方向には打てない」
 
 というゾーンを見つけるのは比較的簡単。
 
 なんせ、実際に前衛が突っ立てるんだから(笑)
 
 だから、シングルスよりもダブルスのほうが、個人の技量の「差」を「戦術」で埋め合わせる余地が十分にあります。
 
 戦術本のなかには、相手後衛bの立ち位置だけで味方後衛aのポジションを決めているものもありますが、それは、4人すべてのプレイヤーが同じく高いレベルにあるときにこそ成り立つ理論。
 
 高校テニスやウィークエンドプレイヤーなど、さまざまな技量のプレイヤーが混ざり合ってゲームを楽しみ、パートナー同士でさえ技量に差がある場合にこそ、ポジショニングには細心の注意を払わなければいけませんし、またそれができさえすれば、その技量の「差」を逆に利用できることにもなります。
 
 次回からは、この相手後衛が違う場所で打ったときのポジショニングを考えていきましょう。