今回から、具体的なダブルスのフォーメーションを考えていきましょう。
 
 まずは、クロスラリーにおいて相手後衛がボールを打つときのポジショニングです。
 
 デュース・サイドでのラリーで、架空のプレイヤーは全て右利きと思ってください。
 
 つまり、味方のフォア側は右方向、バック側が左方向。
 
 相手のフォア側は左方向、バックは右方向をさすことになります。
 
 最初に前衛の基本ポジションから。
 
 それが下の図です。
 
 
 クロスラリーの場合、味方前衛は、相手後衛の正面方向のネット際、図で言うとコート左前にポジションを取ることになります。
 
 その上で、大前提である「左右の分担」を守ることになります。
 
 ですので、頭を越えるロブでない限り、コートの左半分は基本的に前衛が守ることになる。
 
 特に、味方前衛のバック側(左側)、ストレート方向を、強いダウンザラインで抜かれてしまうと、どんなに足の速い後衛でも追いつけない。
 
 それは絶対に避けなければいけません。
 
 かといって、ストレートを抜かれるのが怖くて、味方前衛がサイドラインの上に立つようなことをすると、今度はコートの右側、味方後衛が守る範囲が異常に広くなってしまう。
 
 なので、僕はいつも、
 
「相手後衛のストレートのパッシングショットに、1歩でぎりぎり届くところに立ってろ」
 
 と教えています。
 
 そうすると、僕なんかは、図のようにシングルスラインより内側に入ったところでも、まあ大丈夫。
 
 150cmぐらいの女子選手だと、もうちょっと外側じゃないとダメかもしれません。
 
 つまり、プレイヤーの身長や瞬発力で、立ち位置を変えさせます。
 
 ネットからの距離は、ラケットを持ってアホみたいに大暴れしても、ネットにラケットが当たらない場所、としています。
 
 ただし、これは、うちのチームが完全な「雁行陣しかしない」というペアばかり+後衛のストローク技術が低いからです。
 
 平行陣への変化もありえる上級者では違いますので、それは機会があれば、ご紹介します。
 
 話を、横方向の立ち位置だけに絞ってやりましょう。
 
 ポイントは「ぎりぎりで届くところ」ということ。
 
 ストレートへのパッシングショットを確実に取る必要はありません。
 
 というか、そんなプレーに100%を求めると、かなりサイドに寄って立たなければならず、オープンスペースが広くなってしまいます。
 
 相手後衛にとっては、
 
「『下手をすると』、取られてしまう『かもしれない』」
 
 と思うだけでなかなかパッシングは打てなくなるものですから、その「微妙さ」がポイントになります。
 
 鋭いパッシングショットをボレーするのが目的なのではありません。
 
 しっかりフォア側(クロス)のラリーに対応できるようにしておきながら、「バック側(ストレート)に打たれる回数を極力減らす」というのが真の目的なんです。
 
 ですから、もしも試合などでパッシングショットを打たれると、それを返せなかったのを怒るのではなく、
 
「今、ストレートに打たれたってことは、『抜けそうだな』って思われた結果なんだから、空きすぎてた証拠や。ボレーされる『かも』しれない、って思わせる、ぎりぎりのところを探せ」
 
 と、ポジショニングを修正させます。
 
 これでバランスの良いところに前衛が立ってくれると、後衛はかなり楽です。
 
 ストレートは任すことができ、オープンスペースはかなり狭くなっているはずですから。
 
 前衛の注意ポイントとしては、相手後衛が打とうとしているボールと自分の後ろのコーナーを結ぶ仮想ラインを一瞬でイメージし、それに「ぎりぎり一歩」で届く位置に素早く移動できるかどうかです。
 
 前衛が後ろを見ていては間に合いませんから、常に自分後方のコートの大きさを把握していなければいけませんし、自分の「守備範囲」が正確に把握できていなければ、素早くポジショニングできません。
 
 プレイヤーは自分を過小評価も過大評価もしてはいけないんですね。
 
 練習では、僕が相手後衛となったラリーゲームを行い、ちょっとでもストレートが空いていればバンバン狙います。
 
「これぐらい空けると、狙われる(逆に、このぐらいなら狙われない)」
 
っていう「基準」を体感してもらうためです。
 
 選手は意識しないと、いつの間にかフラフラとセンター寄りにポジショニングする。
 
 特にクロスラリーでは、真ん中をボールが行き来するので、積極的にポーチなどを狙っているときなど、無意識のうちにボールに引き寄せられてしまいますので注意が必要です。
 
 また、僕の本来の感覚でパッシングを打ってしまうと、かなり狭くても狙ってしまいます。
 
 そのくせ、技術がないもんだから、僕の方がサイドアウトして、練習にならない(汗)。
 
 なので、女子高生プレイヤーならどれぐらいストレートが空いていたら打つのか、普段の試合などでの観察を参考に、ボールスピードなども調節しないといけないので、ひどく欲求不満が溜まりますが、これは仕方がない。
 
 特に注意しないといけないのは「人によって違う」ことを忘れないこと。
 
 れっきとした基準を設けながら、選手一人一人の微妙な「差」をつかむのは、やっぱり難しいですね。