さて、これまでの考察をまとめますと、
サーブを打つときに見られる『腕のひねり』は、前腕による『回内』と上腕による『内旋』の2つを連動させた腕全体の運動。
さらにスウィングスピードやひねりの大小によって、ヒジを曲げることでひねりの量を調節していることも多い。
という感じでしょうか。
少なくとも、サーブに必要な腕のひねりは「プロネーション(回内)」という単一の運動だけではない、ということは分かっていただけたと思います。
この「回内」もまた「エッグボール」や「ドライブ」と同じで、用語の使い方自体が問題なのではありません。
ある技術を教えるときに、相手にわかりやすい「キャッチーな」用語を使うことはよくあります。
「プロネーション」というこの用語が普及したおかげで、アマチュアでもサーブの醍醐味を体感できている人は結構多い。
ただ、サーブに必要とされるこの「腕のひねり」を、教える側が、
「『回内』=『前腕(手首)のひねり』で行っている」
と勘違いしてしまい、全く練習方法が変わってしまうことが問題なんです。
実際には、上腕の「内旋」も加えた2つの動きを連動させる必要があるのに、それは置いてけぼり。
テイクバックでの「外旋」、「回外」による準備段階(助走)が無視された、ただの手打ちになってしまいます。
さらに「回内」を「手首の動き」だと単純化してしまうと、手首の掌屈・背屈を加えて、いわゆる「こねた」だけの動きになっている場合もあります(図10)。
写真では「内旋」をしないように、上腕を押さえています。
写真ではわかりにくいですが、ペン先は、写真の奥から手前に向かって傾いているので、可動域は180°近くになっているように感じてしまいます。
これでは、回内をしている意味がないんですが、内旋の存在を知らず、前腕の動きだけで大きなひねりを生もうとすると、こういう結果になってしまうんです。
これが、努力の結果だと言われてしまっては、いたたまれない。
今回改めてインターネットで検索してみると、8年前に比べれば、非常に詳しく正確な解説がされているサイトが多いですが、それでもまだまだ一般プレイヤーには浸透していない。
こういう技術論は、「意見が多い」ではなく「声が大きい」ほうがよく広がるんですね。。。
自分の「昔からの理論」に自信がある人に限って声も大きく、さらに
「プロネーションさえしていれば、どんなサーブでも打てるようになる」
という「プロネーション絶対主義者」に限って、認識が間違っているからタチが悪い。。。。
そもそも、回内・内旋を含めた「腕のひねり」の運動が、胸・肩・上腕・前腕のそれぞれの筋肉の運動連鎖によって起こることを理解しながら、ちゃんと「回内」を説明している人が少ない。
いや「回内」「内旋」の「動きの違い(言葉の違いではなく)」を理解している人はたぶん大丈夫。
言葉で説明することそのものが重要ではないですからね。
問題なのは、腕のひねりのことを「回内(プロネーション)」の一言だけで──つまり、前腕のひねりだけで説明できてしまっている人ほど、怪しい。
「ちゃんと分かってるけど「内旋」とか使うとめんどくさい」って思ってる人か、
「『内旋』の存在も知らない知ったかぶり」か、をこちらが見抜かないといけない。
ああ、それこそ、めんどくさい(笑)
今後、準備ができ次第、サーブにおける腕全体、またそれに連動した体全体の解説もしたいんですが、なんせ時間がない。
誤解のない説明をするには、大量の写真や動画が必要で、それを、生徒にも内緒でこそこそ撮らねばならず、それが大変っていう。。。(笑)
キーワードは「伸張反射」と「運動連鎖」です。
運動連鎖は最近よく聞くけど、伸張反射はどうでしょう。。。
生物の授業では説明するんですが、みなさんは習いました?
でも、特にこの「伸張反射」がすっごく大事で、これを知らない人だと、
「テニスの打ち方と、野球の投球は、全く別ものだ!」
っていう論理になる。
僕からすれば、完璧に似てる、ってわけじゃないけど、全く違うわけでもない、っていう中途半端なかんじになっちゃうんですが(笑)
お暇な方はまた、しばらくしてからお越しいただければ、サーブの話、準備しておきます。