しにたい自分がいた

なぜか


身内1の友達に暴力を振るわれていたから

その暴力へ賛成したのは身内1だったから

その事実を十年以上も忘れていたのに何故か不意に思い出して、いい人間であろうとする身内1が気持ち悪くて仕方なかったから

父親と結婚したことを母親が後悔したから

育て方を間違えたと言われたから

あなたが病気の父親に与えてはいけない食べ物を与えたから死んでしまったと言われたから

大人の身なりで、当時五歳の幼い自分の精神がその言葉できっとしんで消えたから

身内2が結婚して子供を産んで育てる中で旦那と折り合いがつかずに愚痴ばかり聞かされることに疲れていたから

身内2のことを思って伝えた言葉が全て自分勝手だったんだろうと気づいたから

身内2の身勝手さにも疲れたから

身内2と絶縁状態になったから

身内2と絶縁状態になって自分が信じられるものが全部なくなった気がしたから

この家族に自分は必要ないことに気づいたから

仕事で信頼していた人に期待をしすぎたから

信頼していた人に裏切られた気持ちになったから

取り繕われても嫌悪しか無かったから

言葉がこんなに薄っぺらいものだと知ったから

報われるほどの努力なんて出来なかったから

信じようとして信じきれない自分にも疲れたから

頑張ろうと思っても頑張れない自分が心底嫌いになったから

過食嘔吐がいつまでもやめられないから

今以上に醜い自分に戻る気がして怖いから

不安定な自分に嫌気がさしたから

気持ち悪い人間に好意の目を向けられたから

手の届く範囲にある不気味さに精神がイカれたから

運転中にこのまま川に突っ込もうかと思ったから

寝なくても眠くない毎日だったから

吐き気とめまいと頭痛と胃痛などなど朝からずっと寄り添われていたから

一個穴にハマれば芋づる式に全部思い出すから


それなのに

しねなかったのは

なんでだろう


どうしようもなく好きな人が出来た

今までの自分を抱きしめてあげたくなるくらい、大好きな人が出来た

声が聞けるだけで、笑ってくれるだけで、目が合うだけで、会えるだけで、連絡が来るだけで、名前を呼んでくれるだけで、名前を呼べるだけで、ただただ満たされるくらい幸せになれる人

自分を満たしてくれる人

何よりも、誰よりも、幸せになって欲しいと願える人

優しくて真っ直ぐで正しくて美しくて可愛い人

完全なようでいて、とびきりダメなところを持つ人

不安にさせる人

ドキドキさせる人

夢を見せてくれる人

あたたかいのに指先が酷く冷たい人

好きだと言ってくれる人が居た

いつか諦めた淡い恋の匂いの人だった

何かが違えば、何かが変わったのかと思わせてくれる人だった

こんな自分を受け入れてくれる人

どこまでも馬鹿正直で素直で嘘がつけない自分を笑わず受け止めてくれる人

時間が経っても、久しぶりでも、変わらずに居てくれる人がいた

大切にされていると思った

好きだなと思った


悲しませたくないと、心底思える人たちが自分を生かしている気がした




しにたい自分は今もいる

生きている自分の真横にそっと立ってる

一緒に歩いている

しにたい苦しみ悲しみ孤独涙の数だけ付いた左腕の傷跡が主張する


忘れるな


お前がしぬはずだった瞬間

お前が生きようとした瞬間

血に変えて、歯を食いしばった瞬間


心が満たされても消えることはない

暴力に泣きながら耐えて被せられた麦わら帽子の向こう側の虚しさ

あれ以上も以下もない

あの虚しさを忘れるな

光の粒の数々

あれが孤独だ

助けは来ない

救いは無かった


それでも愛したい

過去も、今の自分も

愛しい人も

大事な人たちも

今だって何もかも上手くいかない毎日が続くけど、どうか横に居るだけにして欲しい

しにたい自分がいつか自分の影にならないように

動き出さないように


ありがとう

ごめんね

ゆるしてね

あいしてるよ、