クリスマスと機会飲酒
昨夜の街は、イルミネーションでどこか浮き足立っていた。いかにも年末、いかにもクリスマス、といった感じだ。ただ、俺のような独身のおっさんにとっては、特別な予定があるわけでもなく、普通の年末の一日が、たまたま赤く光っているだけである。こういう日は、「機会飲酒」にあたるのだと思う。いや、正確に言うと、機会飲酒をするには、これ以上ないくらいの機会ではある。街は浮かれているし、理由も後付けしやすい。にもかかわらず、飲酒をする機会そのものが、俺にはなかった。機会飲酒をする機会がない。文章にすると、ますます分からない。自分で書いていて、何を言っているのか分からなくなった。笑そんな昨夜は、大根と椎茸を炊いて、夕飯にした。煮物も、もう慣れたものだ。火にかけて、あとは待つだけ。浮かれた街とは、だいぶ距離のある食卓だった。ケーキの代わり、と言っていいのか分からないが、頂き物の手作りの干し柿を食べた。正直に言うと、干し柿は、あまり得意ではない。これまで、ほとんど食べてこなかった。ただ、真っ白にお化粧したその姿が、やけにうまそうに見えた。試しに一つ食べてみたら、これが、自然な甘さで、驚くほど上品だった。気がついたら、頂いた四つを、全部食べていた。結局、クリスマスらしいことは、何もしていない。飲んでもいないし、ケーキもない。あるのは、煮物と、干し柿と、ややこしい機会飲酒の理屈だけだ。今夜の夕飯も、昨日の煮物だろう。たぶん、それでいい。