ラーメン二郎という理性を失った男達の行き着くこの世の果てがある
そこに行ってきた
さながらクレイジージャーニーである。
小池栄子は驚愕の表情を浮かべ、設楽統は不安な声を漏らし、松本人志はニヤリとその業績に落ち度を探すのだ
あえてグーグルマップは使用しなかった。もちろん地図もだ。理由は今になっても分からない
駅との大まかな位置関係だけを頭に入れ家を出る
今日の松戸駅は普段に比べ人が少ないようだ
これからラーメン二郎に行くと伝えたら人は何と言うのだろう
やめとけお前にはまだ早い
命を大事にしなよ〜
きゃーーーーーーーーーー
マック赤坂に清き1票を
だいたいはこの4択に収まるだろう
通りすがる者の大半が一瞬僕を見つめる
見つめられたらしょうがない、「精一杯頑張って来ます」と心の中で返答する
あ、やべ髪整えてくるの忘れた
鬼ヶ島に向かう桃太郎が寝癖をこしらえていたら笑いもんだ
一目散でトイレへ向かう
髪を整えようとした時気づいた
紺色の長そでに紺色のスボン、紺色と白の五本指ソックスに紺色のクロックス
だからか
いかれた新興宗教の幹部が颯爽と松戸駅構内をかっ歩していたようだ
まぁいい
これから鬼を倒してくるのだ
そうして松戸駅をあとにし、店を探す
場所を見つけるのは簡単だった
目の血走った巨漢が小さな店に列をなしていたからだ
列の最後尾に並ぶ
僕から2人前の人が後ろを振り返り僕を見た
…
え…
じーー、
チラッ、などという生易しいものではなかった
じーー、である
いやシンプルに怖い
色々考えてしまう
(あれ、食券先買ってから並ぶタイプの店?)
(彼なりの注意信号?)
(俺よりギリブサイクだなって思ってんのかな)
やかましいわ
などと考えていたが見つめてきた巨漢はそれっきり凝視はしてこなかった
そのまま並んでいると、順番が来たようで食券を買う様促される
食券を買って、どうすればいいのかわからずまわりを見渡していると
「お兄さん店内で立ち止まんないで。外で待ってて」
と言われてしまった
「くそ!なら先に食券買わさせるんじゃねーよ!」という雑草な自分と「食券を今買った方が順番が来た時スムーズに受け渡しできますもんね。指摘ありがどうございます。ラーメン楽しみにしてます」というカーネーションな自分が頭の中で討論する
結局その中間の「わかりました」とだけ真顔で伝え、また寒さが強まった千葉の外気へと戻った
今度こそ着席を促され、店内へ
屈強な男たちはその見た目に反して静かにみんなうつむき加減でカウンターに座っていた
なんで?なんで?独房?ここ独房ですか?
あの頃の鈴木福くらい質問攻めにしたかった
また怖くなった
そしてラーメンが出来上がったのだろう、店長はトッピングをしていた。そして一言
「ニンニク入れますか?」
客の猪は瞬時にこう答えた
「アブラニンニクカラメデ」
ほわっつ
「ニンニク入れますか?」
また店長が尋ねる
「ヤサイマシニンニクマシアブラカラメデ、アッ、ヤサイハマシマシデ」
別の猪が答える
ほわっつほわっつ
どんどん自分の番に近づいてくる
とりあえず通ぶって「ニンニク野菜アブラで」
と答える事にした
そして店長の鋭い目線が僕に向けられた
「ニンニク入れますか?」
「ニクニクアブッ…ゴホンッ…」
「え?もう一回言ってもらえますか?」
「や、野菜ニンニクアブラで」
少し待って小盛りという嘘で固められた超大盛りのラーメンが到着した
味はたしかに美味しかった。塩気のきいたとんこつしょうゆスープにワシワシの麺がよく絡む。豚肉は柔らかく、味もしっかりついていた。
そのおいしさに箸が止まらないなと思ったつかの間
「スマホいじんのやめてもらえます?」
店長の声だ
僕も含めた猪達の箸が止まる
まぁなんだかんだ店長優しそうだから周りのお客さんの迷惑にならないように注意してあげたのかな
「てめえスマホ早くやめろつってんだよ」
どうやら僕の二席左に座ってる客がラーメンを食べながらスマホをいじっていたようだ
店長は止まらない
「てめえなめてんのか?」
「てめえなめてんのか?」
「てめえなめてんのか?」
「てめえなめてんのか?」
「てめえなめてんのか?」
「早く食えバカ」
猪の地獄煮込みや〜
彦摩呂ならこう言い表すのかな
ラーメン二郎は今日を持って引退とさせていただきます。