翌日、A君はジャージを着たままで、俺が運転する車で実家に戻り、合鍵を取り、加えて親には「会社の先輩の車を借りてぶつけた」等と嘘をついて親から生活費を含め金を借りた様で、立て替えたホテル代はすぐに戻ってきた。(因みに13,000円位だったと思う。)

 

週明け、会社に行ってみるとA君に聞き忘れていた1つの疑問が解けた。

 

自分の机に座ると、自分の机から3列離れた島の向かいに座っているBさんが、コーヒーを持って、こちらにやってきた。(当時はいわゆる「お茶汲み」が当たり前に行われていた時代で、どんなに男性が年下・部下であろうと、うちの会社は女性が男性にお茶をいれる決まり←多分不文律だと思うが、になっていた)

 

Bさん:おはよう。(と言ってコーヒーを自分の机に置いてくれた。)

 

だーと:おはようございます。有難うございます。

 

Bさん:そういえばさ、先週〇〇部のA君から、夜の8時位に電話があって会社に残っている人を聞かれて、だーと君が残ってるって答えたら、携帯の番号教えて欲しいって聞かれて教えたんだけど、電話あった?

 

だーと:(そういう事か。。。)あ、これA君だったんですか?知らない番号だったので、取りませんでした

 

Bさん:やけに焦ってた感じがしたんだけど、何だったのかしらね・・・?

 

勿論言える訳がない。「さぁ、何だったんでしょうね」と言って誤魔化すしかなかった。

 

それとは別にK〇から会社に電話があった。自分はその時何かで席を外していた様で、電話があった事は後で聞かされた。

実は彼のカバンが支店近くの駅のロータリーにある公衆電話ボックスで見つかったという連絡だった。

 

結局、メンタルで休職した人の復帰は3か月掛かってしまい、俺の応援派遣は1か月余計に掛かる事になったのだが、A君は自分の帰任が決まり職場がやってくれた送別会とは別に、一席設けてくれた。

その際にこんな会話をした。

 

だーと:そう言えば、Aさぁ(その頃には上下関係とこれまでの付き合いもあり、呼び捨てで呼ぶ間柄になっていた)、〇〇部のCさんに聞いたけど、カバン、有ったらしいじゃん?

 

A君:そーなんですよ!何かどっかのおじいちゃんが見つけてK〇に届けてくれたみたいで。

 

だ:で、物は大丈夫だったの?

 

A:お金は全額抜き取られていました。カードは翌日停止にしたので実害は無かったですけど、再発行に手間取りえらい目に遭いました。数枚無かったものもありましたが。免許も無事でした。

 

だ:よく免許なんて残ってたな。普通写真入れ替えて、サラ金に持ち込まれるぞ。それだけの被害で良く収まったな。

 

A:いや、あともう一つ。カバンの中に脱いだズボンはくしゃくしゃになっていたんですけど、パンツはありませんでしたw。

 

だ:えっ!?

 

パンツを取られてちょっと優越感に浸っている様に見えたA君に対して、これについては何も言うまい、と思った。(どー考えてもどっかのごみ箱行きだよ)

 

だーと:ところで、まだホテ〇〇呼んだりしてんの?

 

A:あっ、はい。けどアレに懲りて、ちょっと成長しました。

 

だ:え?どんな?

 

A:まず、ホテルで嬢が入れたり持ってきた飲み物は飲まない!

 

だ:ふんふん、それで?(ちょっとポイントずれてないか、と思ったが、そこはぐっと我慢して)

 

A:それと、これ買ったんですよ~。

 

と言って、カバンの中から取り出したのは、

 

自転車を電柱とか柵とかに付ける「鍵チェーン」!

 

だ:え???それ何に使うの?嬢を拘束するの?(性的嗜好ある意味丸出し・・・W)

 

※因みに私が好きなのは「ソフト系」です(念の為・・・)

 

A:いやぁ、まず中身は盗まれない様にカバンには鍵を掛けれる様にして、ホテルでは備え付けの冷蔵庫の取っ手とかに、自分のカバンをこの鍵チェーンで括りつけてます!

 

ウーロンハイを飲みながら聞いていた私は吹き出しましたw。

確かに彼のかばんのジッパー部分には南京錠が付いている(けどさ、その南京錠の鍵はどこにしまうの?、という突っ込みはしなかったが)。

そりゃ、冷蔵庫ごと持って逃げる嬢はいないわな。参った!て、言うか嬢に間違いなく引かれるだろうな、きっと。。。

 

そんな彼も今は3人の子供を持つ立派な父親。真ん中の男の子は甲子園行ったんだよな。その2年後位に僕は親支店から北海道の違う部署に異動になってしまい、その後数年続いた関係は途切れてしまったが、元気にやってんのかな?

 

※お読み頂き、有難うございます。良かったら「いいね」をお願い致します。