犬を飼い始めた友達の家に寄ったことを、蓮は後悔しはじめた。


人なつこい子犬に時間をたつのを忘れてしまった。


なんで今日に限ってこんなに夕暮れが早いのか…なぜあんなに不吉な色なのか…。


あの角を曲がれば家なのに。その角がどんよりと暗い。


暗くかげった車庫と電柱の間に小さい手が見えたような気がして、蓮は足をとめた。


「ふう…」


こういう時に限って、まわりに人影はない。




『蓮はあんまり見えないのに、想像力がありすぎるの。そんなんじゃ引き込まれちゃうからね。怖くなったら陽菜の近くに行きなさい。気にならなくなるから。』


夕奈は中学校まで陽菜と手をつないで学校に行き、毎日のように二人でいたのに、高校は別なところに行ってしまった。


『一生くっついていられるわけじゃないから、そろそろ陽菜ばなれしなきゃ。』


蓮と二人きりのときに夕奈は笑いながら、そう言った。それでも週末には互いの家を行ったりきたりしている。





ふう、と陰が蓮に向かって広がってきた…気がした。蓮はくるりと引き返して、別な道から帰ろうとした。


「蓮!」


ふりむくと陽菜が立っていた。


「遅いじゃん」


走ってきた陽菜で、暗く陰った車庫と電柱が見えなくなり、そして次に見えたときは影はあってもさっきのような陰はなくなっていた。


「翔太が犬飼ったから見に行ってた。」


「へー、かわいい?なんて名前?」


「ポチ、名前で妹とケンカになって、お父さんがポチにしちゃったって。」


「あはは、いいじゃん。最近ポチなんていないよ」


玄関の前で空を見上げた陽菜は「明日も晴れだね」と、蓮を家の中へ押した。