蓮(れん)の最初のその記憶はまだ幼稚園の頃。
まだ母親と手をつないで歩いていた夕暮れ、なぜあんなところに首があるのだろうと思った。
見上げた木の上のそれは、髪の毛がからまったままひからびた首のように見えた。
しかし、それと同時にあんなところに首があるはずもないことに気づき、母親にその質問をしないですんだ。
昼間はなんとも思わない木の上の鳥の巣は、薄暗い帰り道に不吉に見える。
蓮はもう母親と手をつなぐ年でもなくなったのに、はるか頭上にある鳥の巣を見かけて、ふと自分が小さい子どもに戻ったような気がした。
あれが首だとしても、自分を見下ろしているわけではない。
うすぼんやりとした目を空にむけて、枝にからまった髪をじゃまに思いながら暗闇で月を見るのだろう。
あの場所じゃあ、昼の光はまぶしすぎるに違いない。
そんなことを考えながら白樺の横を歩く。
「これから急に日が短くなるんだから気をつけなさいよ」と、2~3日前に姉に言われたのを思い出した。
空はまだ明るいのに、家や道は影になり、沈む。
夏の夕陽はギラギラとまぶしいのに、秋の夕陽はなぜこんなに暗いのだろう。
早く家に帰らないと…。
蓮は夕陽を背に歩き出した。
