記憶に残る先輩 | 社会人の福音書 - Gospel of Business Players

昨日は少々お堅い内容だったので、今日はくだけた話題にしてみる。タイトルを見直して、「本当にくだけてるのか?」と思われたかもしれないが、ご安心を。


素晴らしく優秀で「記憶に残る先輩」など当然のことながら非常に限られるが、今日はそちらの紹介ではない。

仕事がかなりイマイチだったにもかかわらず、私の「記憶に残る先輩」がたった一人だけ存在する(仕事振りがあまりにひどくて記憶には残っているものの、“一切関わりたくない”と思うような先輩は除外し、仕事はイマイチだが何かが違う興味深い先輩という意味である)。面白いかどうかはみなさんの感覚次第だが、何のためにもならないと思うので、軽い気持ちで読み流して欲しい。


その先輩の名前は江藤氏(仮名)。風間トオルを優しくしたようなルックスで、女性にはわりと人気があったが、怪しい噂も多かった。私の座席がいつも江藤氏と隣か対面だったので、彼の行動は殆どキャッチできていた。

当時は、巷に携帯電話が普及し始めたばかりの頃であったが、そんな時期にもかかわらず、江藤氏は既に2機の携帯電話とポケベルを所持しており、始業前から頻繁にそれらの機器をチェックしては、いつも私と視線を合わせ、なぜか静かに頷くのであった。


そんな江藤氏の仕事振りをいくつかご紹介しよう。


【居留守】

彼はいつものことながら仕事を円滑に進めないので、取引先から必ず催促の電話が掛かってくる。我々が電話を取って江藤氏へ「XXさんからです」と取り次ごうとすると、彼は両手で×の字を作るのである。ここまではよくある話だろう。ところが、江藤氏はあまりに頻繁に居留守を使うので、掛けてきた相手が社外の人にもかかわらず、「いるの分かってるんで替わってください」と言われるのである。仕方なく繋ぐと江藤氏は悪びれる様子もなく、「バレちゃいました、どーもすみません!はいはい?」というような調子なのである。


【自分の否を潔く認める】

居留守も多いが、今度は取引先から何かが納品されていないというようなクレームの連絡が入った。仕方なく電話に出た江藤氏の謝罪がこれまた素晴らしかった、「申し訳ございません!それは私の怠慢です!」。笑顔で対応していた江藤氏に、敗戦して甲子園を去る高校球児のようなすがすがしさを感じた。


【懇親会での自己紹介】

事務方との懇親会でのこと、私は都合が悪く欠席したので、翌日別の先輩に「どうでしたか?」と尋ねたところ、その先輩が、「またまた江藤さんやってくれたよ。自己紹介で、『XX部の江藤です、趣味はS●Xです!』とか言っちゃってさぁ、みんなかなり引いてたよ!」とのこと。そのことを江藤氏に訊いてみると、「いや~、みんな引いちゃってだなぁ、わっはっはっ」と笑い飛ばしていた。


【プライベート】

プライベートも結構興味深い。いろいろな話を私にしてくれるのだが、例えば、「昨日の夜さぁテレビ見てたら“かみさん(奥様)”がすぐそこで電話しててさぁ、明らかに男と電話してんだよ。まじどうなってんだかなぁ・・・まあ、俺も女から着信あったんだけどさ、少しは気を遣って欲しいよな、気を。」とのこと。気を遣うとかそういう問題では無いが、当時若かった私には面白かった。


【お立ち台】

部長のデスクの前で部長に叱責されることを「お立ち台」と呼んでいた。江藤氏は当然お立ち台の常連であった。ある日、彼がまたお立ち台にいたが、殆どミスをしない中堅女子社員も珍しくお立ち台に同席していた。30分くらい経っただろうか、お立ち台イベントが終了し江藤氏が席に戻ってきた。私が「大変でしたね」と声を掛けると、彼は「いや~、今日はXXさん(女子社員)が一緒だったから部長の怒りが半減したなっ!」と嬉しそうに語った。そして、机上の書類等をそのまま引き出しに入れて帰って行った。


これだけ割り切ってやってくれると見ていて面白いし、気持ちがいい(業務上迷惑を被っている人には大変申し訳ないが)。絶対に真似をしてはいけないが、記憶に残っているという点においては悪いことではないだろう。ぐちぐち、ねちねちとできもしない事をこねくり回している中堅社員が多いが、どうせ自分の出来が悪いことに変わりはないのだから、これぐらい潔くやってみたらどうか。部下や後輩、女性社員や派遣社員に馬鹿にされるくらいなら、少しでも印象に残った人の方がまだましである。


ちなみに江藤氏は、いつも「仕事がねぇ・・・」とは言われていたが、なぜか馬鹿にはされていなかった。