今日のテーマは、大手証券の、最大にして最悪の腐敗構造、
“投資信託営業”の全て。これについて見ていきたい。
最初に、日経記事で一般的な問題点を確認しよう。
日経記事はコレ。
2011年7月28日(木)朝刊 4面
“公募投信「小粒」多く”
記事のリードは以下の通り。
「公募投資信託の数が増え続けている。今年6月末には4025本と、12年ぶりに4000本を超えた。主に高金利の外国債券や通貨で運用する投信が増えているためだ。」
この記事ひとつをみても、投信業界における問題は山積している。
・横並び 類似品乱立
記事の通りだが、例として、2009年1月に野村アセットマネジメントがつくった「通貨選択型」と呼ばれる投信がヒット商品になった際、複数の競合他社が類似商品をつくった経緯を紹介している。
コンセプトをあつかましくパクリ、節操なく「勝ち馬に乗ろう」としたワケだ。投信業界では、こういうパクリ合いが日常茶飯事だ。
・日本の投信は、米欧より「小粒」
記事によれば、投信1本当たりの純資産残高(10年末)を算出した際、
米国1273億円に対し、日本は163億円に過ぎないとのこと。
「投信の先進国である米英では、新商品を次々に売り込むのではなく、定番化したファンドをじっくり育てる例が多い」と記事で述べられているが、そうした背景もあり日米で大きな差が出ている。
・投信の売り方も問題含み
日経記事の、投信評価会社モーニングスターの朝倉智也代表の以下の言葉が、投信販売において社会的に最も許されない問題を端的に表している。
「設定当初に販売に力を入れて、その後は新ファンドに買い替えを勧める営業がいまだに多い」
要するに、このブログでも以前取り上げた回転売買問題である。投信は買付するときに
手数料を“抜ける”ので、とにかく手数料稼ぎ(COMニーズ)の為に、以前買付させた古いファンドを売り払う等して、どんな手を使っても買付させるのである。
なお、回転売買については以下のリンクを参考にして頂きたい。
もちろんコスモ証券は単に氷山の一角であり、大手証券も回転売買にご熱心なことは言うまでもない。
47NEWS:金融庁、コスモ証券に改善命令 「回転売買」で
金融庁・報道発表資料:コスモ証券株式会社に対する行政処分について
しかし、増え続ける投信の“ナゾ”は、まだこれだけでは説明できない。投信営業の現場にとっても、投信が増え続けなければいけない必要性がしっかりと存在する。
なにしろ、証券会社は何と言っても現場の営業部隊が会社を仕切っている。会社の上層部もおおよそ営業出身であり、給料も営業部隊が一番多くもらっている。なぜなら、会社の収益に最も貢献しているからである。
営業部隊(の管理職)が最も社内で影響力を持っていることを考えると、投資信託が増え続けるのは、現場の営業サイドがそれを強く望んでいるから、これが一番の理由だと筆者には思えるのである。
どういうことか。キーワードは3つ。
「“管理”の都合」
「“期限付き”のセールストーク」
「“必要悪”を許す言い訳」
ただ、それらを説明する前に、投資信託がどれくらいのペースで増えているか、まず確認しよう。
上記の日経記事によると、公募投信の本数は、
2004年7月:2525本→2011年6月末:4025本
と増えている。つまり、2004年8月から83カ月で1500本のファンドが新規設定された、
ということになる。
これは、1500本÷83カ月=約18本で、毎月18本ペースで投信の新商品が出ていたことになる。一体どこにそんな必要があるのか、理解に苦しむものであるが・・・。
前置きが長くなって申し訳ないが、投信について基本的なことをもう一つ。
投信には当初募集期間というものがある。
投信の運用には当然資金が必要となるため、運用を始める前に営業をかけ、ある程度カネを集めておかねばならない。
例えば、9月1日に新規投信の運用を開始するのであれば、その2週間前の8月18日くらいからカネ集めをはじめ、9月1日の前日31日までにある程度、投資家のカネを最低100億円程度は用意しておく必要がある。そのような最初のカネ集めの期間を当初募集期間といい、その期間の投信を募集投信という。これが営業戦略に効いてくるのだ。
では、一つずつ見ていこう。
・“管理”の都合
証券会社の支店は、1か月ごとに営業目標を課せられている。その目標の達成率に関して、会社は全国の支店に激しい競争をさせている。
万が一、支店の達成率が低いものなら、そこの支店長をはじめとする管理職に対して人事上・給与上の制裁の可能性が高まるため、支店長等管理職は絶対に達成率を落としてはならないと考えている。
それゆえ、達成率を引き上げるべく、手数料を確実に得られるよう「悪企み」する。
例えば、ある支店で今月8月の手数料目標が2億だったとしよう。営業計画では1億7000万円の手数料はメドが立ちそうだが、あと3000万円がどうしても足りない。どうするか・・・。
その時に、募集投信を使うのである。
実は、募集投信には驚くようなルールがある。
ある募集投信が出た時、当初募集期間で支店が販売する金額の枠は申告制となっており、
申告した枠は絶対にキャンセルしてはならない、と決まっている。
例えば、A投信が今月当初募集期間になったとして、ある支店が「その当初期間にA投信を必ず1億円売ります」と本社に申告すれば、絶対にその1億はだれかに買ってもらわなければならず、「2000万円の枠が余りました」など絶対にあり得ないことになっているのだ。仮にキャンセルなどしようものなら、それこそ左遷等の“制裁”である。
これは管理職レベルはもちろん、末端のセールスまで隅々に行き渡る絶対強制ルールである。
証券会社では、気にくわない部下と思われればすぐパワハラの対象となるので、やらなければその分誰かがやるハメになるという理由で、募集投信の出来が悪いセールスは罵倒の的である。そのため、募集期間中については、セールスの優先事項は何より募集投信の販売である。
ゆえに、先ほどの例えで、今月の手数料目標にあと3000万円足りない支店があれば、
3000万稼ぐために募集投信10億円(手数料3%)を申告し、強制的に何が何でも、死に物狂いでこの10億円の投信枠を顧客に売り付けるのである。
これこそ、当初募集期間が明確に決まっていることから、募集投信が営業成績の管理に使われる仕組みである。
・“期限付き”のセールストーク
これは小さいことではあるが、顧客に買ってもらうその決断の材料として、当初募集期間が使われるということである。
例えば、当初募集期間が次の水曜日までなら、水曜日までに必ず買うかどうか決心してもらうことになる。対面型証券の顧客は比較的、投資に詳しくないので、こういう“期限”があることが案外、顧客の背中を押す結果となる。だから比較的、募集投信は売りやすいのである。
・“必要悪”を許す言い訳
先ほどの例えで、手数料3000万円を稼ぐために、手数料3%の募集投信を10億円売り付ける話をしたが、
この不況の折、そんなに簡単に10億円が売れるワケがない。
そこで、キャンセルできない募集投信が売れ残っていたらどうするか?
もう皆さんお分かりではないだろうか?答えはカンタン、回転売買である。
「もし募集投信を本社にキャンセルしたら、重い“制裁”が待っている」、
一方で「募集投信を買わせたら厚い手数料が稼げる」、
また部下からすれば「募集投信を買わせないとパワハラに合う」、
「募集投信を多く売り付け、上司・同僚に恩を売り、実力・忠誠心をアピールしたい」etc・・・
言い訳は何でも出来る。そこから生まれるのは、
何かを売り払って、募集投信を買わせる回転売買である。
ひどいケースでは、今月の募集投信を買わせるために、顧客に“先月の”募集投信を売り払わせる回転売買を勧誘するセールスさえいる。
はっきり言って、募集投信は、手数料稼ぎのプロモーターなのだ。既に述べた日経記事の中で、モーニングスターの朝倉さんが問題視していたのはこのことなのである。
手数料を稼ぐために、作らなくて良い新商品を作り、新商品で勝手に自らを追い詰め、無理な回転売買を正当化する論理を作り出す、この“愚の骨頂”システム・・・。
投信は、顧客のあなたの為にあるのではない。会社の為にある。
投信を買うなら、本当によくよく検討し、証券会社の言いなりになってはいけない。銀行から買うのも同じである。
自分で勉強しない、判断しない、信念をもてないのであれば、あなたは投資などしないで下さい。