【カイロ=大内清】エジプトは、民衆デモの高まりを受けてムバラク前大統領が退陣に追い込まれてから、11日で丸1年を迎えた。軍最高評議会による暫定統治に反発する若者中心の民主化グループは、この日を「不服従の日」と銘打ち、ゼネストとデモを呼びかけている。ただ、先の人民議会(下院)選で大勝したイスラム原理主義組織ムスリム同胞団傘下の自由公正党など宗教勢力は不参加を決めており、街頭活動を継続する先鋭的な民主化グループとの対立がいっそう鮮明になっている。
これまでのところ、ゼネストへの参加を表明しているのは「4月6日運動」などの若者グループや、一部の左派政党にとどまっている。
これに対し、イスラム教スンニ派の最高権威とされるアズハル機構の総長は10日、「ストライキはハラーム(禁止された行為)だ」とするファトワ(宗教裁定)を発表。この日のイスラム教の金曜集団礼拝では、各地のモスク(イスラム教礼拝所)で多くのイスラム指導者が「ゼネストは国を不安定化させる」と、信徒に不参加を呼びかけた。
自由公正党のほか、議会選で第二党に躍進したイスラム教の原点回帰を唱えるサラフ主義政党「ヌール(光)党」もゼネスト反対を表明しており、ゼネストの規模は限定的なものとなる可能性が高い。
自由公正党などとしては、議会選での勝利を政治基盤の強化につなげたい時期だけに、ゼネストによる政情混乱は避けたいとの思惑がある。また軍部にも、民主化グループの押さえ込みに宗教界を動員する意図が見え隠れしており、今後は急速な民主化を掲げる勢力と、宗教勢力との反目が強まる恐れもある。
エジプトでは今月、サッカーファンの暴動で70人以上が死亡した事件を機に、暴動を放置したとして軍部への反発を強める若者らと治安部隊とが5日間にわたり衝突し、緊張が高まった。ただ、一般市民の間では社会の安定を望む声が支配的となっており、今回のゼネストが不発に終われば、民主化グループはさらに孤立を深めることになりそうだ。