金正日・北朝鮮総書記死去:核問題、行方混とん 米、軍事挑発を警戒 拡散防止最優先 | darkpotのブログ

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北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記の死去により、体制維持と国威発揚の役割を果たしてきた核開発問題の行方が不透明さを増している。22日にも北朝鮮との核協議を予定していた米国は日韓などへの軍事的挑発や核拡散の危険増大を警戒しつつ、後継体制の出方を注意深く見守る考えだ。6カ国協議の参加国は、北朝鮮の不安定化を望んでいない点は共通しているが、核の安全管理が最優先の米国に対し、中国は北朝鮮への影響力保持を模索しているとみられる。「金王朝」の権力継承を機に関係国間のさやあても表面化しそうだ。【坂口裕彦、ワシントン白戸圭一、北京・成沢健一、ソウル西脇真一、ウィーン樋口直樹】

 米国は金総書記から金正恩(キムジョンウン)氏への権力継承が順調に進まずに北朝鮮が不安定化し、核・ミサイルの管理体制が揺らいで大量破壊兵器が拡散する事態を懸念している。権力基盤の弱い正恩氏が軍部の支持を取りつけるため軍事的挑発に傾斜し、韓国との南北関係や米朝関係が緊迫する可能性もある。オバマ政権は権力継承の行方に神経をとがらせ、日本、韓国など同盟国と連携しながら軍事面でも警戒を強める構えだ。

 「正恩氏が北朝鮮指導部の高官たちに『勇気』のあるところを見せようとして、挑発行為に走る可能性がある」。米中央情報局(CIA)の元朝鮮半島担当で米シンクタンク・ヘリテージ財団上級研究員のブルース・クリングナー氏が指摘する。韓国外交安保研究院の尹徳敏(ユンドクミン)教授も「自分の力を誇示する必要に迫られた場合、核実験や弾道ミサイル発射などを行うこともあり得る」と分析、北朝鮮が後継体制下でただちに核開発を放棄することはないとみている。

 金総書記にとって核開発は、国内向けには、軍部強化を優先する「先軍政治」を主導し、権力基盤を維持する装置だった。一方、対外的には6カ国協議や米朝協議で「瀬戸際外交」を展開して譲歩を引き出す材料でもあった。過去2回の核実験はプルトニウム型だったとみられるが、昨年11月には北朝鮮北西部・寧辺(ニョンビョン)のウラン濃縮施設の存在を米専門家に明かし、新たな外交カードとした。

 北朝鮮当局者が米専門家らに話したところによると、施設には約2000台の遠心分離機が設置されている。米シンクタンク「科学・国際安全保障研究所(ISIS)」によると、北朝鮮側の主張通りなら、原爆1個分の原料になり得る約1トンの低濃縮ウランを約4カ月で製造できる能力を持つという。

 金総書記の訃報は、米朝が22日から北京で今年3度目の核協議を開くことで最終調整に入り、米日韓などが求めるウラン濃縮停止での合意に向けて期待が高まっていた時に飛び込んできた。7月と10月の2度の協議で北朝鮮は「核の平和利用」を主張したが、11月末~12月初めに訪朝した米専門家グループには濃縮中断に応じる用意を示唆していた。

 北朝鮮は服喪期間に入るため米朝協議の先送りは必至。今後は「葬儀委員会名簿トップの正恩氏が後継者の正統性を活用して核交渉の枠組みを使っていく」(尹教授)との見方もあるが、指導力を確立できない場合、軍部の勢いが増してウラン濃縮が続行される可能性もある。オバマ政権は正恩体制の対応を注視せざるを得ない。

 オバマ大統領は金総書記の死去を受け、韓国の李明博(イミョンバク)大統領と電話協議し、韓国の安全保障に責任を持つ考えを伝えた。また、19日昼(日本時間20日未明)に米国務省で予定しているクリントン長官と玄葉光一郎外相の日米外相会談で、急きょ今後の対応を協議することになった。

 日本政府は6カ国協議再開に向け、ウラン濃縮活動の停止などを米韓とともに求めてきた。ただ、南北、米朝の協議で日本が関与できる余地は限られている。外務省幹部は「6カ国協議の話は日米外相会談の後だ」と米国とのすりあわせが必要との認識を示した。藤村修官房長官も記者会見で「米朝協議が次回いつ開かれるかを注目している」と述べ、関係国の出方待ちの姿勢を示唆した。

 ◇6カ国協議、中国が早期再開探る 朝鮮半島緊張回避に全力
 北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議議長国の中国は08年12月から中断している協議の早期再開を関係国に働きかけてきた。米朝協議進展の兆しが見え出した直後の金総書記の死去に衝撃を受けていることは間違いない。6カ国協議再開の展望は不透明感が強まったが、中国は後継体制支援を続けつつ再開の糸口を探るとの見方が強い。

 「(北)朝鮮の核問題に対する中国側の立場は明確だ」。中国外務省の劉為民報道局参事官は19日の定例記者会見で、朝鮮半島の安定のため、6カ国協議の早期再開を追求する立場を強調した。06、09年の核実験で朝鮮半島情勢の緊張を招いた金総書記の強硬姿勢に関する質問にはコメントを避けた。

 中朝関係は北朝鮮による核実験やウラン濃縮活動の着手で冷え込んだ。対話による核問題の解決を主張する中国は、関係国の危機感をあおる金総書記の手法に振り回された形だった。それだけに今後の北朝鮮体制が不安定化し、再び朝鮮半島情勢が緊張することを回避するために全力を挙げるとみられる。

 金総書記は昨年5月から今年8月までの間に4回、中国を訪問し、うち3回は胡錦濤国家主席と会談して両国関係の強化と6カ国協議の早期再開を確認。10月には次期首相の有力候補とされる李克強副首相が訪朝し金総書記との会談で協議再開に向けた北朝鮮の対話の動きを支持する考えを表明、事態の進展に期待感を高めていた。

 遼寧社会科学院辺疆研究所の呂超所長は本紙の取材に「6カ国協議再開は金総書記が決めた方針であり、新たな指導者も変更することはあり得ない。(北)朝鮮問題は中国の周辺外交の中でも最重要課題の一つであり、まずは権力継承が安定的に進むようにできる限りの経済支援をしていくだろう」と語った。

 ロシアは経済面で北朝鮮との結びつきを強め、朝鮮半島情勢に積極的に関与する姿勢を示し始めている。

 ◇北朝鮮核開発を巡る主な動き

85年12月 核拡散防止条約(NPT)加盟

86年 1月 寧辺の原子炉稼働

93年 3月 NPT脱退表明

    6月 米朝協議でNPT脱退留保で合意

94年10月 核開発凍結の見返りに軽水炉提供などを盛り込んだ米朝枠組み合意

   11月 黒鉛炉や関連施設を凍結

98年 8月 弾道ミサイル「テポドン1号」発射

02年 1月 米が「悪の枢軸」と非難

   12月 核施設凍結解除を発表、国際原子力機関(IAEA)査察官を追放

03年 1月 NPT脱退宣言

    8月 6カ国協議開始

05年 2月 核兵器保有宣言、6カ国協議の参加中断表明

    9月 核放棄を明記した6カ国協議共同声明

06年10月 初の地下核実験実施

   12月 6カ国協議再開

07年 2月 6カ国協議で寧辺の核施設停止など合意

    7月 核施設の稼働停止

   11月 核施設の無能力化開始

08年 6月 6カ国協議に核計画を申告

   10月 米がテロ支援国家指定を解除

09年 4月 弾道ミサイル発射、核施設の再稼働、IAEA監視要員を国外追放

    5月 2回目の地下核実験実施

10年11月 米専門家にウラン濃縮施設公開

11年 7月 インドネシア・バリ島で南北会談

   10月 ジュネーブで米朝協議