小板にて濃茶をたてば茶巾をば

小板の端におくものぞかし 利休

 

 利休百首の四十八番です。

 

 これは、現在の千家には残っていない点前で、古流系の藪内流や道安流系の石州流、十哲流系の都流には残っています。

 

 都流では荒目板にのみ行うものですが、この荒目板を用いる際に水指が共蓋である必要があります。塗蓋では、荒目板を用いず、柿合などの小板を用いるのです。

 

 真塗や敷瓦ではこの作法はなく、荒目板独特の規矩です。

 

 荒目板は粗いものから次第に細かくなっていく横段の鉋目を入れた真塗の板です。

 これ似たようなものに「杉の砂摺り」があります。

 

 つまり「水がついても良いように加工されている」のです。

 だからこそ、この「小板の端におくもの」という手が生まれ、点前に変化ができた訳ですね。

 しかも、共蓋に限れば、点前の幅が広がり、客の目を愉しませることになります。

 そうそう、確認しましたが、当流の古法では、共蓋の場合には、点前の前から茶巾を蓋に載せておく「茶巾飾り」にすることができるものだそうです。そうすると茶筅は普通に運び出せないので、穂出しで持ち出すか、茶筅飾りにすることになるとか。面白いですね。

 

 このようなことから、共蓋の場合拭かないのですね。ただし、荒目板に限っては、小板の端に載せるため、茶盌に仕込んで運び出します。

 

 変化に富んだ点前を見せるための道具の組み合わせの妙。

 

 利休さんは本当によく考えてらっしゃる。